2023/09/21
質問通告に基づき質問します。
最初に、新たな行政経営への移行実現プランについてです。
世田谷区は、区政運営の基本的な指針であり、最上位計画である次期世田谷区基本計画の策定に向け、検討を進めています。この基本計画に掲げる施策を確実に推進し、目指すべき未来の世田谷の姿を実現するとして(仮称)新たな行政経営への移行実現プランの骨子案が取りまとめられました。
新たな行政経営への移行実現プランの背景としては、感染症、気候変動、物価高騰などのほか、人口が減る、税収が減る、職員の時間外勤務が増加している、職員の若年化、職員の確保が難しいなど、暗い見通しが並び、今後、歳出面では、社会保障の増や社会インフラ老朽化への対応、大規模災害への備えなど、課題が山積みです。
ならば、何が必要か。目指すべき理想を持ち、その共通の理想に向かうチームワークづくりが必要ではないでしょうか。目指すべき世田谷の未来が前提にあってこそ、本当の意味での課題解決につながるのではないでしょうか。チームで個々人が強みを生かして役割を担い、コミュニケーションを密にすることで情報を共有し、ノウハウを積み上げ、チームの知恵で効率化のアイデアを出す。
しかし、それぞれの職場では効率化のアイデアを出せるような余裕もなく、定型的で困難度の低い仕事を見つけ出して外に出すということでは、世田谷の未来が見えてきません。公務の魅力を引き出す取組こそ必要です。そのためには、チームで課題に取り組むことです。若年層の力を引き出すためにも、ベテランの会計年度任用職員の常勤化の検討を含め、仕事を外に出す前に今必要な人を増やすべきだと考えます。見解を伺います。
外部委託にするに当たっては、偽装請負を絶対にさせないこと。この間、給食、食堂を運営する事業者の倒産のニュースに見られるような事業者の突然の撤退に備えること、窓口業務など公務が担うべき業務を明らかにすることが求められます。世田谷区が公的責任を果たすことの十分な配慮について見解を伺います。
次に、自転車用ヘルメット着用促進事業について伺います。
七月から実施されている世田谷区自転車用ヘルメット着用促進事業は、区民の自転車用ヘルメットの着用促進、交通事故による頭部負傷の軽減を図ることを目的としています。区内の自転車店に事業協力をお願いしていることは産業振興の観点からも必要と考えますが、現状、協力店は僅か十七店、販売計画一万個に対し千七百三十五個の取扱いにとどまっており、決して成功しているとは言えません。協力店を増やしていく取組が必要です。
区のホームページを見ると、自転車店の皆様へと題したページがあり、事業協力に関する主なメリットとデメリットが示されています。ここには、区民の来店増加と店の特徴やサービスをアピールできるの二点をメリットとしている一方、ヘルメットの置場の確保、区民からの問合せ対応に時間が取られる、補助金申請などの書類作成が発生し、手間がかかる、補助金販売に係る納品記録、販売価格表などの書類の適正管理が必要であることをはじめ、全部で九つもの項目がデメリットとして示されており、ある意味、率直とも取れますが、メリットよりデメリットが多い事業に進んで協力しようと考える自転車店はなかなかいないのではないでしょうか。私は一人で営んでいるある自転車店店主から、うちのような小さい自転車店では、書類申請の作業は煩雑で負担となる、パンク修理で汚れた手で申請書類を書くわけにもいかない、協力するメリットは感じられないと伺いました。
まちの自転車店は、通勤通学、買物時など、区民にとって大切な移動手段である自転車の販売、修理、メンテナンスを行い、区内の交通安全に貢献している区民生活になくてはならないお店です。ヘルメット着用促進事業を進め、自転車店の営業を支える意味でも協力のメリットが感じられるよう工夫することが必要です。申請書類の簡略化や手数料の上乗せなどの工夫を行い、事業協力店を増やす対策を取ることを求めます。見解を伺います。
最後に、尾山台二丁目の竹林について伺います。
世田谷区では主に南の地域、国分寺崖線から多摩川までの区域は、東京都風致地区条例により多摩川風致地区に指定されています。風致地区とは、都市の中で自然的景観を維持し、自然と調和の取れた環境をつくるために、都市計画法に基づいて定められた地域、地区のことです。十ヘクタール以上は都、十ヘクタール未満は区市町村が指定します。都市計画法第五十八条一項では「風致地区内における建築物の建築、宅地の造成、木竹の伐採その他の行為については、政令で定める基準に従い、地方公共団体の条例で、都市の風致を維持するため必要な規制をすることができる。」と定められています。風致地区内でこれらの行為を行う場合、東京都風致地区条例及び特別区における東京都の事務処理の特例に関する条例に基づき、区長の許可が必要です。風致地区には第一種風致地区と第二種風致地区があり、建築物の建蔽率、建築物の高さ、壁面後退距離が制限され、建築物の位置、形態及び意匠が、その建築物の敷地及び周辺地域の風致と著しく不調和になってはいけないとされています。世田谷区は、多摩川風致地区内をA地域、B地域、C地域、D地域及びS地域に区分していて、尾山台は風致地区の核としての地域を取り巻くなど風致地区の美観、雰囲気を守る役割を果たすべきとするB地域に区分されています。
今年六月、相続の関係から、尾山台二丁目の生産緑地を解除し、地主の方が売却。三井不動産レジデンシャル株式会社が取得をして、戸建て専用宅地十一区画の建設工事を行う計画が進められています。この土地は、竹林とケヤキ、モチノキなどの樹齢百年を超える大木が密集。長年にわたり地域の貴重な緑地として親しまれており、計画を知った地域住民は、三井不動産レジデンシャル、保坂区長、区街づくり課宛てに、今ある貴重な樹木を全て伐採するのではなく、できるだけ残してほしい、十一区画の建築計画の見直しなどを要望、提案するオンライン署名を実施。現在三千九百七十五人の賛同が寄せられています。
私は、署名を呼びかけた住民の方にお会いしました。宅地造成工事計画では、全戸数十一戸の一区画当たりの敷地面積は大部分が百十九平方メートル、敷地面積が百平方メートル以上、百二十平方メートル未満の住宅用地は風致地区の準狭小宅地となる。隙間なく住宅が建てられることで、地域の住環境が一変してしまう。また、長い年月をかけて張りめぐらされた竹と樹木の根により地盤がしっかりと固まっているが、樹木が伐採されれば、コンクリートで擁壁を造っても、地震や大雨などの災害時には土砂崩れなどの危険性が高まるのではないかと話してくださいました。また、建築計画の見直しについて、近隣住民から四十人以上の賛同を得られたとも伺いました。
現在、東京都が施行認可した神宮外苑再開発で、都が指定している風致地区で、低木も含めて三千本もの樹木が伐採の対象になっていることに対して批判が広がり、大きな社会問題となっている中、近隣住民の方々の宅地開発によって身近な場所の貴重な緑が失われていく心配は当然のことだと思います。
尾山台二丁目の竹林について、区は開発事業者である三井不動産レジデンシャルに対し、住民との話合いの場を持つよう働きかけることを求めます。区は、話合いの場において、緑を守る立場で住民に協力することが必要です。見解を伺います。
世田谷区は、区制百周年となる二〇三二年にみどり率を三三%とする長期目標世田谷みどり33を掲げ、これを踏まえて、世田谷区みどりの基本計画を策定し、緑の量の確保と緑の質の向上に取り組んでいます。二〇二二年から生産緑地の指定解除が始まっており、尾山台二丁目の竹林のような状況が区内でも広がっていく中、これまでも取組がされてきましたが、生産緑地の買取りなど、区内の緑を守る対策を区が一層進めていくことが必要です。生産緑地が地主の都合で売却される中で、区内の緑をどう守っていくのか、見解を伺います。
以上で壇上からの質問を終わります。
私からは、会計年度任用職員の常勤化などについて御答弁いたします。
現在の特別区での常勤職員の採用方法の一つとして、経験者採用という枠組みがあり、民間企業や自治体などでの一定年数以上の業務経験があることを受験資格としております。しかしながら、受験資格である業務経験年数にカウントできるのは週二十九時間以上の勤務形態に限定されており、区の会計年度任用職員の多くはこの基準に達しないことから、現行の枠組みでは受験できない状態にございます。日本全体で生産年齢人口が減少し、人材の獲得競争が官民を問わず厳しさを増している中、有用な人材の確保は急務であり、現在世田谷区では他区とも連携して受験資格の見直しを特別区人事委員会に働きかけているところでございます。
今後(仮称)新たな行政経営への移行実現プランに基づき、様々な手法により人材確保に努め、増大する行政需要に的確に対応するための組織体制の底上げを進めてまいります。
以上でございます。
私からは、外部委託するに当たって世田谷区が公的責任を果たすことの十分な配慮について答弁します。
今後、ますます多様化、複雑化、個別化する区民ニーズに対応していくためには、区民や地域団体、民間事業者や大学と積極的に連携し、課題解決に取り組むとともに、民間事業者が持つ専門性やノウハウ、柔軟性などを生かした、業務のアウトソーシングを取り入れていくことも必要であると考えております。アウトソーシングの検討に当たっては、内部事務や定型的な業務、時期的に集中する業務や一定の基準等を仕様に定めることで質の確保ができる業務などを想定しておりますが、個々の業務の性質を踏まえ検討してまいります。
また、適切な運用に向けては、公的責任の下、アウトソーシング後においても、最終的な責任は区にあることを前提とした上で、業務ノウハウの継承や業務の質の確保に努めるとともに、情報セキュリティーの確保や偽装請負の防止をはじめとした労働関係法令の遵守、労働環境への配慮、適正な労働条件の確保などに努めてまいります。
以上でございます。
私からは、自転車用ヘルメット着用促進事業の協力店の拡充について御答弁いたします。
区では、令和五年四月の改正道路交通法の施行による自転車用ヘルメット着用の努力義務化に伴い、区民の自転車用ヘルメットの着用を促進するため、七月二十七日から自転車用ヘルメット購入費用の補助制度を開始しております。補助に当たっては、事業協力いただける区内自転車店に、区民の購入分に対し、割引対応いただいたその割引額を区から自転車店へ補助金として交付する仕組みを取っていることから、店頭での対応に加え、補助金交付申請などの必要な書類の提出、また、販売に伴う手数料などもないことを御理解いただいた上で、現在十七店の皆様に御協力いただいているところでございます。
なお、申請書類につきましては、事業協力店の皆様の御意見等を踏まえ、対応可能な項目は簡略化するなど、負担軽減の工夫を図ってまいります。
区といたしましては、今後、事業協力のお声かけの範囲を広げ、自転車大型販売店へも対応をお願いするなど、事業協力店が増えるよう努めてまいります。
以上です。
私からは、尾山台二丁目の竹林の開発事業者に対し、住民との話合いの場を持つように働きかけることについて御答弁申し上げます。
区では、大規模な敷地における宅地化に際しましては、世田谷区みどりの基本条例等の各種法令に基づく様々な取組を行いながら、区民、事業者の皆様に御協力をいただいているところでございます。御指摘の尾山台二丁目の竹林につきましても、事業者に対して、計画及び施工に当たっては、区の条例はもとより、東京都風致地区条例に基づく緑化基準を遵守し、引き続き、世田谷にふさわしい質の高い緑化の実施を求めております。
また、当該事業者でございますが、これまでも周囲にお住まいの方々へ個別に伺い、計画の説明を行っていると聞いておりますが、改めて話し合う機会を持ち、相互理解を深めるよう働きかけてまいります。
以上でございます。
私からは、生産緑地が売却される中で、区内の緑をどう守っていくかについてお答えいたします。
区では、区内に七つの農地保全重点地区を指定し、重点地区内で農業振興拠点となり得る一団の生産緑地を農業公園として都市計画決定しております。これらの生産緑地においては、主たる従事者が亡くなるなど、農業が継続できなくなった際、区がこれを取得し、農業公園として整備を進めているところでございます。
一方、農を取り巻く状況は都市化の影響や相続税の負担、農業従事者の後継者不足などにより厳しい状況であり、令和三年度のみどりの資源調査においては、五年前の前回調査と比較して、農地が六・六ヘクタール減少している結果となっております。
区といたしましては、みどりの基本計画において、農の緑の継承を取組の一つとして位置づけており、引き続き、農地保全方針に基づく農業公園の整備を通して、農に対する区民の理解と共感を深め、区民を巻き込んだ生産緑地保全の動きにつなげてまいります。
また、生産緑地地区の追加指定、営農支援、区民農園の拡充など、庁内各部の連携の下で、農地保全の取組を一層推進し、農のある緑の豊かさの継承に努めてまいります。
以上でございます。
先ほど尾山台二丁目の竹林の件で、事業者に対して改めて話し合う機会を持ち、相互理解を進めるよう働きかけるということなので、ぜひその方向で進めていただきたいと思います。
以上です。