2024/06/12
介護崩壊の危機を止めるための区の支援策を求め、伺います。
三年に一度の介護報酬の改定で、今年四月から訪問介護の基本報酬が二から三%引き下げられました。身体介護、生活援助などの訪問介護は、要介護者の在宅での生活を支える上で欠かせません。このままでは在宅介護がかなわず、在宅放置を招きかねません。厚労省の調査を基にした、しんぶん赤旗入手の資料で、訪問介護事業所の約四割が、二〇二二年度以降三年連続で赤字であることが明らかになりました。
介護報酬は、介護保険から介護施設、事業者に支払われます。引下げで、地域で訪問介護を支える小規模・零細事業所が経営難に陥って撤退し、在宅介護の基盤が壊滅的になるおそれがあります。昨年の訪問介護事業者の倒産、休廃業は、過去最多の四百二十七社に上ることが東京商工リサーチの調べで分かりました。
厚労省は、引下げの理由に、訪問介護の利益率がほかの介護サービスより高いことを挙げています。これはヘルパーが効率的に訪問できる高齢者の集合住宅併設型や都市部の大手事業所が、利益率の平均値を引き上げているもので、実態からかけ離れています。訪問介護は特に人手不足が深刻で、利用者の求めに応えられていません。長年の給付費抑制策で基本報酬が引き下げられた結果、ヘルパーの給与は、常勤でも全産業平均を月額約六万円も下回ります。ヘルパーの有効求人倍率は、二二年度で十五・五倍と異常な水準です。政府は、介護職員の処遇を改善した事業所に加算をつけるとしますが、既に加算を受けている事業所は、基本報酬引下げで減収になるだけです。加算も不十分で、基本報酬引下げ分をカバーできない事業所が出ると予想されます。
今回の改定では、介護職員の処遇改善のための報酬を〇・九八%引き上げるとしています。これにより厚労省は職員のベースアップを二四年度に、月約七千五百円、二五年度に月約六千円と見込みますが、数字の根拠が明確でない上に、この程度の賃上げでは介護人材の確保は困難です。
日本共産党は、国会で、訪問介護の報酬引下げ撤回のための財源は年約一兆円の訪問介護総報酬に対し約五十億円にすぎないと示し、引下げ中止を迫りました。介護保険の国庫負担割合を増やし、保険料、利用料の軽減、介護報酬の抜本的引上げが必要です。
六月五日の衆議院厚生労働委員会で、介護報酬改定などの影響について、介護事業者等の意見も聞き、速やかで十分な検証を行うことなどを政府に求める介護障害福祉事業者の処遇改善に関する決議が全会一致で議決されました。介護報酬引下げ撤回と報酬再改定を求める運動が広がり、異例の決議となりました。
区内訪問介護サービス事業者に話を伺いました。向こう半年で三か所の近隣事業所の閉鎖が行われると聞いていると深刻な声を伺いました。介護の仕事に対するリスペクトが足りない、あと五年でどれだけの事業所が残るかともおっしゃっていました。後継者、後任者が見つからない、ヘルパーの高齢化などの課題を抱える中で、地域訪問介護の灯を消してはならないと懸命に事業継続されています。区として国に対し、介護保険の国庫負担割合を増やし、保険料、利用料の軽減、介護報酬の抜本的引上げを求めるべきではないでしょうか、見解を伺います。
あと五年でどれだけの事業所が残るかと話す訪問介護事業者の声を区はどう受け止めるのか、認識を伺います。
国の介護保険改悪から訪問介護事業所の営業を守る独自策に踏み出すことを求めます。見解を伺います。
六月三日、世田谷区内特別養護老人ホーム施設長会は、物価高騰に対する高齢者福祉・介護施設等への支援についてという要望書を提出しています。昨年度実施した電力・ガス・食料品等価格高騰重点支援地方交付金では、電気、ガス、食料品等の上昇分を全てカバーできず、なお経営に大きな影響を与えている。今年度は、電気・ガス料金の激変緩和措置は本年五月で終了し、六月使用分から大幅に値上がりすることが予想される。介護人材の不足に関しても深刻さを増しており、光熱水費、食材費の物価高騰へのさらなる対策と、介護現場で勤務する職員の処遇改善を緊急に行うことを要望しています。
ある特別養護老人ホームでは、六月からの年間電気代を試算したところ三百万円増になると伺いました。国の制度が打ち切られても、区としての介護施設支援策、喫緊に進めていくべきではないでしょうか。電気、ガス等物価の高騰から介護事業所の負担軽減を図るための区独自の支援を行うことが必要ではないでしょうか、見解を伺います。
次に、緊急輸送道路沿道建築物の耐震化の推進について伺います。
一月に発生した能登半島地震では多くの建物が倒壊し、延焼が発生、救援の要となる緊急輸送道路は各所で寸断されました。緊急輸送道路とは、阪神・淡路大震災の教訓を踏まえ、震災時に避難・救急・消火活動、緊急物資の輸送を円滑に行うため、高速自動車国道、一般国道及びこれらを連絡する幹線道路と、知事が指定する防災拠点を相互に連絡する道路のことで、特に沿道建築物の耐震化を図る必要があると認める道路を特定緊急輸送道路、それ以外の緊急輸送道路を一般緊急輸送道路としています。
現在、上用賀四丁目で上用賀公園拡張事業を進められています。ここに隣接する区役所と環八通りをつなぐ世田谷通りは一般緊急輸送道路となっています。上用賀公園は広域避難場所として指定されていることを踏まえ、大規模災害時における全区的な防災の拠点となります。それにふさわしい機能を果たすためにも、特定緊急輸送道路と同等に沿道建築物の耐震化に力を入れるべきです。緊急輸送道路の沿道建築物の耐震化を推進するためにも、一般緊急輸送道路を特定緊急輸送道路に指定するよう都へ求める必要があると考えますが、区の見解を伺います。
特定緊急輸送道路、一般緊急輸送道路、それぞれの沿道建築物について、耐震診断、補強設計、耐震改修工事など耐震化の費用助成が行われています。しかし、耐震改修工事の助成が、特定緊急輸送道路の沿道建築物は対象事業費の十分の九、助成上限額が五億二百万円に対して、一般緊急輸送道路の沿道建築物は対象事業費の三分の二、助成限度額が六千万円と耐震化助成内容に差があります。
そこで伺います。一般緊急輸送道路の沿道建築物の耐震化を促進するためにも、助成内容の見直しが必要と考えますが、区の見解を伺います。
最後に、PFAS汚染対策について伺います。
東京都が令和三年度から実施してきた島しょ部を除く都内の全ての自治体を対象にした有機フッ素化合物PFASの地下水に含まれる濃度調査が完了し、全体のおよそ三分の一に当たる二十一の自治体で、一リットル当たり五十ナノグラムという国の暫定の目標値を上回る値が検出され、そこには世田谷区も含まれています。
有機フッ素化合物の総称であるPFASは一万種類以上あり、フライパンや衣料品、半導体など幅広い製品の製造に使用される化学物質で、全国各地の米軍基地や工場周辺などで汚染が相次いでいます。永遠の化学物質と呼ばれ、自然に分解されずに、人体や土壌などに長期間残留し、環境への影響、発がん性や子どもの成長への影響など、健康被害が指摘されています。欧米では全面使用禁止を含めた大幅な規制強化が進み始めています。アメリカ環境保護局は四月、PFASの一種PFOSとPFOAについて、飲料水内でそれぞれ一リットル当たり四ナノグラムの厳しい規制値を設定しました。
去年十一月に、世界保健機関のがんの研究機関が、有害性が指摘されるPFOSとPFOAの二種類について発がん性があると評価していますが、国はこれまで科学的な知見が十分でなく、健康への明確な影響は不明としてきました。PFASをめぐっては、住民団体、多摩地域のPFAS汚染を明らかにする会が二〇二二年から住民の血液検査を実施、七百九十一人の約半数から、米国で健康被害のおそれがあるとされる指標値の1ミリ当たり二十ナノグラムを超えるPFASが検出され、深刻な汚染の実態が明らかになりました。
立川市や調布市では、都の調査とは別に独自に地下水などの調査を行い、結果をホームページで公表しています。東京都による地下水に含まれるPFASの濃度調査において、世田谷区は、国の暫定の目標値を超える値が、令和四年度に続き令和五年度の調査でも報告されました。都の調査とは別に、区独自の地下水調査の実施を求めます。見解を伺います。
以上で壇上からの質問を終わります。
私からは、介護保険に関して三点御答弁いたします。
最初に、介護保険の国庫負担割合について御答弁いたします。
区は、介護保険事業の財源について、区の財源負担や被保険者の保険料負担が過重とならないよう、これまでも国費負担割合の引上げと調整交付金を別枠化することを国に求めております。また、低所得者に対する保険料や利用料の軽減についても、国の責任において財政措置を含めて総合的かつ統一的な対策を講じること、さらに、介護報酬に関しましても、介護人材確保のため処遇改善加算の対象を拡充するなど、介護職員全体の賃金水準の底上げを行うことを要望しております。介護保険制度の持続的かつ安定的な運営のため、国費負担割合の引上げ等について、引き続き国に働きかけてまいります。
次に、訪問介護事業所について御答弁いたします。
令和六年度の介護報酬改定において、訪問介護の基本報酬が引き下げられ、訪問介護事業所が安定的にサービス提供を続けていくことに不安を感じていることは承知しており、区といたしましても危機感を抱いております。一方で、介護サービスは介護報酬で運営することが大前提であり、区独自の訪問介護事業者への支援につきましては、財源の確保や事業者間、自治体間の公平性の担保などの課題があるため困難であると考えております。引き続き、第九期の介護報酬改定の影響を注視し、機会を捉えて国へ要望を伝えていくとともに、訪問介護事業所を対象とした処遇改善加算等の取得など、丁寧に周知と支援を行ってまいります。
最後に、物価の高騰の負担軽減に関する区独自の支援についてです。
近年の原材料価格の上昇や円安の影響等による物価の高騰対策として、介護サービス事業所等の負担を軽減するため、国の新型コロナウイルス感染症対応地方創生臨時交付金を活用し、令和四年度と五年度に、エネルギー価格・物価高騰対策給付金の交付を行いました。令和五年度の給付金については、通所・入所系事業所に利用定員一人当たり四万五千円、居宅サービス系事業所に一事業所当たり四万円、訪問入浴介護事業所に訪問入浴介護の車両一台当たり二万五千円を交付することとし、三百九十七法人から申請があり、約六億四千三百万円を交付したところです。
令和六年度は、国が介護報酬を社会情勢や環境の変化に対応して改定したことから、現時点で給付金等について実施する予定はありませんが、今年度、都が開始した介護職員と介護支援専門員を対象とする居住支援特別手当事業や、既存の区独自補助などを介護事業所に活用いただけるよう、施設長会等と意見交換をした上で丁寧に周知をしてまいります。
私からは以上です。
私からは、緊急輸送道路沿道建築物の耐震化の推進について二点御答弁いたします。
まず、一般緊急輸送道路を特定緊急輸送道路に指定するよう都へ求める必要があるとの御質問についてです。
特定緊急輸送道路につきましては、東京における緊急輸送道路沿道建築物の耐震化を推進する条例に基づき、緊急輸送道路のうち、特に沿道の建築物の耐震化を図る必要があると認められる道路として東京都が指定しており、それ以外を一般緊急輸送道路としております。
指定に当たりましては、応急対策の中枢を担う都庁本庁舎や立川地域防災センター、重要港湾、空港などを連絡する道路や、その道路と区市町村庁舎などを連絡する道路とされており、区内では高速道路環状七号線、環状八号線、甲州街道、国道二四六号、目黒通り、世田谷通りの一部などが指定されております。
区としましては、現行の東京都耐震改修促進計画の計画期間が令和七年度末であることから、今後、計画改定が進められると想定しており、その過程の中で、緊急輸送道路の沿道建築物の耐震化をさらに推進するため、特定緊急輸送道路の指定の考え方や、一般緊急輸送道路の沿道建築物の耐震化助成制度などの都の支援策の拡充について意見を伝えてまいります。
次に、一般緊急輸送道路の沿道建築物の耐震化の助成内容の見直しについてです。
区では、地震による災害から区民の生命と財産を守るために様々な耐震化支援制度を整えており、一般緊急輸送道路の沿道建築物についても、耐震化への助成制度を実施しておりますが、近年、特定緊急輸送道路の沿道建築物に比べて、助成制度の活用はされていない現状がございます。一般緊急輸送道路沿道建築物は、他の非木造建築物よりも手厚い助成内容となっておりますが、議員お話しのとおり、特定緊急輸送道路の沿道建築物の助成内容と比べると差もあることで、自己負担額が大きくなってしまうことも助成制度を利用した耐震化の取組が進まない要因の一つとして考えられます。
区としましては、一般緊急輸送道路の沿道建築物のさらなる耐震化の推進も必要であると考えており、今後予定している世田谷区耐震改修促進計画の改定作業の中で必要となる助成内容について調査研究を進めてまいります。
以上です。
私からは、地下水に含まれる有機フッ素化合物、いわゆるPFASの濃度調査についてお答えいたします。
国が昨年七月に示しましたPFASに関する今後の対応の方向性では、継続的な環境モニタリングを実施することが重要とされておりまして、現在、水質汚濁防止法に基づき、東京都が水質調査を継続的に行っております。令和四年度、五年度の調査におきまして、PFOS及びPFOAの暫定指針値が、一リットル当たり五十ナノグラムのところ、それぞれ異なる区内の井戸より一リットル当たり七十四ナノグラムが検出されております。これらの暫定指針値の超過が確認された地点につきましては、継続監視調査が行われています。
区内の地下水は水源や経路の状況が把握できず、飲用に適していない可能性が高いため、区では、以前よりその旨を区民に周知し、飲まないようにとお伝えしてきております。今後も東京都の地下水調査や継続監視調査が行われること、区内の地下水は基本的に飲用に適していないことなどから、現時点では区独自の調査は予定しておりません。一方で、区民の不安解消に関しましては、迅速かつ正確な情報提供、また適切なリスクコミュニケーションを行うことで不安解消に努めてまいります。
以上です。
訪問介護事業所の営業について危機感を抱いていると答弁がありました。それならばなおのこと、独自政策に踏み出すことを要望します。
それから、介護人材確保については、先日の他会派の質疑で、施設長会との意見交換を踏まえ具体的な検討を進めている、区独自の支援策構築に取り組んでいくと、区が答弁を行っています。電気代、ガス代などの区独自の負担軽減策についても具体的検討を重ねて要望しまして、質問を終わります。