2024/10/07
本共産党世田谷区議団の福祉保健領域の質疑を始めます。
区民の方から、自宅の隣地に建てられた新築マンションについて相談がありました。
そこは、通常の共同住宅として利用される予定だとされていたが、実は一棟丸ごと家主不在型の民泊事業を開始するということを知り、大変驚くとともに不安を感じていると。私は現地にてお話を伺ってきました。地下一階地上三階建てであるこの建物には、南側に窓が一切ありません。普通なら、住居ごとに日当たりを考えて窓が設置されているはずですが、それがないので、ここは倉庫になるのではないかと思った住民の方もいらっしゃいました。民泊用で使うならば、窓がなくても大きな支障はないでしょう。私も、何年も同じ人が住み続ける前提の建物のつくりではないのではという印象を持ちました。
ごく近隣の住民宅に対して、事業者から民泊事業を行う検討の旨を示したチラシが投函され、後日、近隣住民と民泊事業者との間で説明会が行われました。参加した住民の方々は、民泊に関する要望書を提出しています。幾つか御紹介します。
民泊事業はやめていただきたいです。不特定多数の出入りによって治安の悪化、犯罪のリスクが高まることが想定されます。住宅街であるため民泊時のマナー、ごみ捨てのルール、深夜の騒音、近隣住民とのトラブルなど、不安しかありません。入退室時間の制限、近隣とのトラブルが発生したら事業停止の確約が欲しい。どれを見ても、自分の家のすぐそばで民泊事業が始められることへの不安、懸念ばかりです。
この問題について、住民は世田谷区に相談をしており、事業者と紛争中である認識を区に持ってほしいという思いから、両者の話合いの場を区があっせんすること、解決するまで民泊事業の届出は受理しないことを求めましたが、書類に不備がなければ民泊事業の届出を受理すると回答があり、非常に不安な思いだったと伺っています。
その後も住民の粘り強い取組が進められた中で、幸いにも事業者から区への民泊事業届出前に、当該マンションでの民泊事業は断念すると連絡が入ったということです。
とはいえ、事業者が区民の求めに応じなければ問題解決がされないまま民泊事業が始められてしまうところでした。住民の方は、新築の投機性の強いマンションであり、建築中にも近隣住民とのトラブル発生があり、民泊事業を行うにはふさわしくないと事業者は判断したのでは。民泊事業によるトラブルが回避される見通しとなり、安堵していますと述べておられます。
今回のケースは決してレアケースではなく、今後も同様の問題が起きることは想像に難くありません。世田谷区としても、住民に寄り添った対応を進めることが求められるのではないでしょうか。
民泊事業に際し、近隣住民からの懸念がある場合は、事業者が届出を行う前に、区が住民との話合いの場を持つよう事業者に働きかけるなどの対応を行うようにすべきではないでしょうか、見解を伺います。
住宅宿泊事業については、訪日外国人の増加による宿泊施設の不足等を背景に、事業者の業務の適正な運営の確保と国内外からの観光客の宿泊需要に対する的確な対応をもって、国民生活の安定向上及び国民経済の発展に寄与することを目的として住宅宿泊事業法が制定され、特別区においては保健所長への届出により住宅宿泊事業を営むことができるようになりました。
区は、法律の十八条に基づき、住宅宿泊事業の実施を制限する期間を世田谷区住宅宿泊事業の適正な運営に関する条例で定めるとともに、住宅宿泊事業に係る届出手続及び業務に関する世田谷区における住宅宿泊事業の実施運営に関するガイドラインを定め、世田谷区における住宅宿泊事業の振興及び適正な実施運営の確保を図っております。
住宅宿泊事業法では周辺住民に対する事前周知に関する規定はありませんが、区ガイドラインにおいて、住宅宿泊事業実施前に保健所への事前相談及び周辺住民への事前周知等を事業予定者に求めています。
事業者には住宅宿泊事業の適正な運営に努めていただく必要があることから、保健所への事前相談時に、住宅宿泊事業者向けの住宅宿泊事業ハンドブックに基づき、住民への事前周知や事業者の責務について事業予定者に説明を行っており、さらに、事業者を対象とした研修会を定期的に開催しております。
今回のケースでは、これに加えて家主不在型、建物に管理者が常駐しない形での民泊事業を行うとしていました。住宅地やマンションなどで使用されていない部屋を有効活用しようということではなく、新築マンションでの一棟丸ごと民泊をやるという中で管理者を常駐しないというのは、宿泊者の安心安全の面からも、トラブル発生での周辺住民への影響を考えても問題があるのではないでしょうか。
区のガイドラインにおいて、民泊の形態によらず管理者の常駐を義務づけるべきではないでしょうか、見解を伺います。
住宅宿泊事業法では管理者の常駐を規定していませんが、家主不在型の場合は原則、国へ登録した住宅宿泊管理業者に委託しなければならないとされており、住宅宿泊管理業者は周辺住民から苦情及び問合せに適切、かつ迅速に対応しなければならないとされております。
区ガイドラインでは、住宅宿泊管理業者に委託を行う場合、届出住宅へ速やかに駆けつけることが可能な体制、特に苦情があってからおおむね三十分以内、交通手段の状況等により時間を要する場合は六十分以内に現地に赴けることを確認してから委託する旨、規定しております。
また、住宅宿泊事業法では、住宅宿泊事業者は、公衆の見えやすい場所に標識の設置が義務づけられ、標識に緊急連絡先を記載することとなっております。住宅宿泊事業者への適正な指導、研修を通して、今後とも地域住民の生活環境の悪化を防ぐよう努めてまいります。
苦情があってからおおむね三十分以内と。時間を要する場合は六十分以内に現地に赴くということで、すぐじゃないよなということで、やっぱり何かあったら、その場ですぐに対応するという体制というのが本来はあるべきではないかと思います。
住宅宿泊事業法は、管理者設置要件などの基準が極めて緩く、届出さえあれば基本的に営業を認めるというものです。住民が知らない間に住宅密集地や路地裏にも民泊が乱立し、騒音やごみ捨てをめぐって地域との摩擦が起きるケースも少なくありません。国による観光立国という中で民泊の推進が図られている中で、住民の生活環境への影響、配慮といったところの法律的な裏づけが後景に追いやられているのではないかと思います。
日本共産党は、民泊については、密集市街地やマンションでの営業規制、宿泊者の安心安全を保障するための管理者常駐の義務づけ、近隣住民の合意のない営業を認めないなどの規制の強化が急務だと考えます。
ある雑誌記事によると、民泊が訪日外国人、インバウンドをはじめとする観光客の宿泊先確保と空き家の有効活用法として全国的に注目を集め始めたのは二〇一五年頃。しかし、二〇二〇年に始まった新型コロナウイルスの流行で宿泊客が急減。事業者の撤退が相次いでいたが、コロナ禍後にインバウンドが再び増え出して、宿泊需要が急回復。二〇二四年七月時点で全国の届出住宅数は二万五千件を超え、コロナ禍前を上回り過去最多に。また、四月から五月における全国の民泊宿泊者数は約三十二万五千人となり、前年同期比で約一・三倍になったと報道されています。
コロナ以前から、この民泊はありますけれども、コロナ禍で一旦は民泊の問題も棚上げされていたような印象もありますけれども、今またコロナ禍後というところで、改めてこの民泊を取り巻く問題が浮き彫りになっていると思います。こういう状況で、区として、やっぱり国に対して民泊事業のトラブルから住民の生活環境を守る取組、これをしっかりさせることを求めることを要望します。そして、区としても民泊事業に懸念を抱く住民の皆さんに寄り添う対応をしっかり行うことを要望しまして、質問者を替わります。