文教委員会所管分の決算審査令和2年10月09日

2020/10/09

質問項目

 

ICT環境の整備に関して

中里光夫 委員

 それでは、私からはICT環境の整備に関して質問をしていきたいと思います。

 コロナによる学校の休校中の体験を通じて、保護者や現場の教員からは、ICTの教育への活用に、期待とともに不安、様々な意見が聞かれています。ある小学校の保護者の方は、学校に働きかけて、ズームの朝会をやってもらった、子どもも先生や友達の顔が見えて喜んでいた、休校中のストレスから少し救われたということをおっしゃっていました。また、独自の動画を作って、学習の支援を行う先生もいました。

 一方、別の小学校の保護者の方からは、うちの学校は何もなかった、ロイロノートもログインして終わりという感じだった、隣の学校はズームをやったらしいけれども、学校で違うのはどうなのかという声もありました。学校現場の力量で大きな差が生まれています。

 学校の授業での活用、そして、家庭での学習支援や、オンラインでの利用を視野に入れた小中学校の児童生徒一人一台のタブレット配備が十一月から順次始まっていきます。今年度中に全てが納品され、教室のネットワーク環境も今年度中に整い、来年度から本格運用が始まっていきます。しかし、運用する学校の体制には不安があります。多忙を極める教師に新たな負担となるのではないか。教員の研修なども始まりますが、現場で教員を直接支援する体制が重要です。

 九月の文教常任委員会で、ICT支援員の増員、スクール・サポート・スタッフの増員、学習指導サポーターの配置が示されました。しかし、スクール・サポート・スタッフや学習指導サポーターは、授業などの教育活動一般を支援する人です。ICTの専門家のICT支援員は、増員されたとはいえ、小中学校九十校に対し、僅か六名です。このような体制で、日々起こる現場のトラブルや疑問に対応できるでしょうか。

 ICT支援員を各校に配置するなど、支援体制のさらなる強化を求めます。見解を伺います。

隅田 副参事

 ただいまお話がありましたように、この十月より、学校のICT活用の取組を支援するICT支援員を三名から六名に増員し、区内全ての小中学校を訪問して、ICT操作や教員研修について支援を行うようにいたしました。

 今後、児童生徒一人一台の情報端末が整備され、ICT支援員のニーズがますます高まってくると想定しており、さらなる増員について検討してまいります。

中里光夫 委員

 六名に増員して、全ての小中学校を訪問するということですけれども、これはあまりに少ないと思います。本当に慣れない先生方が、一遍にハードはそろうけれども、それをどう活用していくかということでは、やはり詳しい人のアドバイスがいつでも受けられる体制がどうしても必要だと思います。これはしっかりと人員を増やして、体制を強化していかないと、まともに回らないと思いますので、よろしくお願いします。

 今回のICT環境の整備は、文部科学省のGIGAスクール構想に基づくものですが、この構想には問題があります。子どもの健康被害の問題、使い方次第で画一的な授業となるんじゃないか、それから、将来的に自治体の負担が膨大になっていくといったことです。画一的な授業というのは、授業内容や子どもの評価を民間企業が開発するソフトに丸投げするようなことをすれば、子どもはタブレットに向かい、問題を解き、全問正解ならおしまい、言われたとおり正解を出せばいいという教育の質の低下を招きかねません。

 ICTは、人間と人間のリアルな交流による豊かな学びや成長を支えるための道具として、必要に応じて使うという姿勢が大切です。通常授業での使い方は教師に委ね、強制しないことが大切です。見解を伺います。

隅田 副参事

 ICTを活用した新たな学びにより、子どもたちの資質能力をより効果的に育成してまいりたいと考えております。授業の中でのクラスメートとの意見交換の機会を増やし、一人一人の学習理解度に合わせた課題に自分のペースで取り組ませたりするためのツールとして、一人一台の情報端末の整備は有用であると考えております。一方で、教師による直接的な支援や、子どもたちが共に学び合うといった、これまでの教育実践の中で培われた教育活動の重要性も認識しております。

 これからも児童生徒一人一人に豊かな学びを保障するために、対面での学習とオンラインによる学習を組み合わせた教育の推進に取り組んでまいります。

中里光夫 委員

 これまでの教育実践の中で培われた教育活動の重要性は本当に大事だというふうに思います。ICT機器が入ったからといって、本当にそれに丸投げしてしまうような使い方になれば、一人一人がそれぞれソフトに向かって問題を解いていく、先生はそれを見ているだけということでは、豊かな教育とは言えないというふうになると思います。そういうことにならないように、しっかりと教育実践を進めていく姿勢が大事だというふうに思います。

 今年度中に全校の全ての普通教室にWi―Fi環境を整備する計画です。使いやすいネットワーク環境の整備は、ICT機器を有効に使用するためには必須だというふうに思います。しかし、子どもたちの健康への影響に注意を払う必要があります。

 電磁波で体調を崩す電磁波過敏症―EHSというものがあります。私は、電磁波過敏症の問題、電磁波と健康問題に取り組んでいる方からお話を伺いました。この方は過敏症の当事者ということで、様々な活動を行っている方です。学校無線LANの導入が進む諸外国では社会問題にもなっていると。欧州評議会では、学校には電磁波のないエリアを作ることなど、様々なことを二〇一一年に勧告しています。また、アメリカでは、不使用時には教室のアクセスポイントの電源を切っておくこと、アクセスポイントをできるだけ子どもたちから離れた場所に設置することなどの対応をしている州もあります。

 学校にWi―Fi環境を整えていく際には、Wi―Fiルーターはできるだけ子どもから離れた位置に設置するなど、子どもの健康に注意を払った対応をする必要があると思います。対応を求めていきたいと思います。

 そして、タブレットの使用による子どものネット依存症、そして、目などへの健康被害の問題も様々指摘されています。健康被害については、日々新しい知見が生まれている、研究が進んでいる問題です。その研究の知見、そして、情報共有にしっかりと取り組んで、子どもたちの健康問題について、教育委員会としてしっかりと取り組んでいくことを求めたいと思います。答弁を求めます。

會田 教育総務課長

 約四万三千台のタブレット型情報端末の配備に合わせ、区立小中学校九十校の通信ネットワーク環境の再整備に向け、プロポーザル方式により、設計及び施工を担う事業者の選定手続を進めているところです。

 Wi―Fi環境の整備につきましては、教室の天井に無線のWi―Fiアクセスポイントを設置する予定です。天井ということで、子どもたちから一定の距離がありますが、一方、天井設置であっても、安定、高速なネットワークを確保できる機器を選定してまいりたいと考えております。

 ICTの活用に当たっては、文部科学省が作成した、児童生徒の健康に留意してICTを活用するためのガイドブックを踏まえ、長時間、連続して画面を注視しない、長時間、同じ姿勢を続けない等の留意事項について、改めて周知を徹底する、また、新たな知見を研究しながら、健康被害の防止に十分配慮しながら進めてまいりたいと考えております。

中里光夫 委員

 健康問題については新しい問題ですし、諸外国では、様々研究が進んだり、いろいろな対策や規制も強化されているようであります。そうしたこともしっかりと調べながら、研究に取り組んでいただきたいと思いますが、もう一度いかがですか。

會田 教育総務課長

 新たな知見等を踏まえながら、しっかりと考えてまいりたいと思います。

中里光夫 委員

 しっかり取り組んでいただきたいと思います。

 最後に、国は今年度に限って、タブレットの購入や通信環境の整備に補助金を出しています。しかし、今後のランニングコスト、それから、タブレットの買換えなどについての財政措置については、何も示されていないと。このままでは、将来、区財政に大きな負担となってかぶさってくる可能性があるわけです。これは義務教育になるわけですから、国に対し、今後も財政措置をしっかり取るよう求めていくべきです。見解を伺います。

會田 教育総務課長

 GIGAスクール構想に基づくタブレット型情報端末の配備と校内通信ネットワークの整備につきましては、国及び都の補助金を活用して実施しております。来年度以降も、授業や家庭学習で使用するソフトウエア経費、タブレット端末やネットワークの運用保守経費、ICT支援員等を活用する委託経費等、様々な経費が継続的に必要となります。

 GIGAスクール構想に基づく新たな学びの充実に向けた教育ICT基盤の整備拡充は、世田谷区政策方針の一つである、子どもの学びと育ちの支援に基づく取組であり、引き続き、国や都に対し、補助金等の要望を提出するなど、取り組んでまいりたいと考えております。

中里光夫 委員

 財政の問題は、今回の議会全体を通じても、大きな問題となっています。特に国や都から必要な財源を取ってくるというのは大事な問題ですし、これは非常に大きな規模のお金に関わる問題ですから、国に対してしっかりと求めていっていただきたいと思います。

 以上で質問を終わります。

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