予算特別委員会 令和3年3月11日

2021/03/11

質問項目

 

DXについて

中里光夫 委員

 今、黙祷もささげましたけれども、東日本大震災から十年たちました。改めて、犠牲になられた方々に哀悼の意を表するとともに、被災者の皆さんにお見舞いを申し上げます。

 それでは、日本共産党の企画総務領域の質問を始めます。

 最初に、DXについて。

 暮らしに役立つICT技術の活用は、国民合意の上で進めるべきものです。しかし、政府は自治体の新たな再編方向を示した自治体戦略二〇四〇構想を基にマイナンバーカードを押しつけ、自治体業務システムの一元化を進めようとしています。職員を半減し、行政サービス民営化、業務集約化で自治体の仕組みを抜本的に変質させることが目的です。

 そもそも政府は、行政のデジタル化で住民サービスの向上を徹底すると言いますが、このコロナ禍で持続化給付金や家賃支援給付金などをデジタル申請のみとしたために、いわゆる情報弱者が利用できず、支給を受けられない事業者が多数生まれました。世田谷区でも、特別定額給付金の支給でマイナンバーを使用することがかえって自治体の業務負担を増やし、支給の遅れを招きました。現実には、住民サービスの向上にならない事態が起きています。

 デジタル庁設置関連六法案が国会に提案され、うち五法案が九日に審議入りしました。これだけ重大な法案を一緒くたに束ねて審議すること自体が問題です。

 法案の中身も、個人情報を利活用する強い権限を持つデジタル庁を設置すること、これまで税、社会保障、災害の三分野に限定すると言ってきたマイナンバーの利用範囲を医師免許などの国家資格に広げること、個人情報保護法制の一本化、住民基本台帳や地方税などの自治体の情報システムの標準化や国がつくる全国規模の共通クラウドの利用押しつけ、こういったことが問題です。

 個人データの利活用が優先され、プライバシー権などの人権保障が後退し、監視社会につながる危険がある。地方自治を侵害し、住民サービスの低下を引き起こす危険があります。

 経団連などは、行政機関、民間、地方自治体がそれぞれ進めてきた個人情報保護の仕組み、特に自治体の条例を情報共有の障害、二千個問題などとして個人情報保護法制の一本化を求めてきました。

 二千個問題とは、個人情報保護法令と自治体の個人情報保護条例が全国に合わせて約二千個存在することから、それぞれの違いが情報流通を阻害しているとして、企業が個人情報の利活用を進める環境を整えるために一本化せよという主張です。

 今回の法案は、まさにその要求に沿って個人情報保護法制を一本化しようとするものです。政府の文書では、官民や地域の枠を超えたデータ利活用が活発化として、支障となる現行法を是正するとしています。改定の方向性として、全国的な共通ルールを法律で設定し、その上で、法律の範囲内で必要最小限の独自の保護措置を許容とされています。自治体が独自に積み上げてきた個人情報保護の仕組みの否定、地方自治の破壊につながりかねません。

 自治体情報システムの標準化、共通化についてですけれども、国は、二〇二五年度を目標に、基幹系十七業務システムについて国の策定する標準仕様に準拠したシステムに移行としています。

 十七業務とは、住民基本台帳、税、国保、障害者福祉、介護保険、児童手当、生活保護、就学などなどです。帳票の統一にとどまらず、業務の流れなども国が標準を決めるとされています。区はどのような対応を迫られるのか、伺います。

山田 ICT推進課長

 現在、国により進められている個人情報保護制度の統合化や自治体の業務システムの標準化、共通化の取組においては、法的根拠を伴う制度化、義務化、また、それらに係る財政支援が予定されております。

 区としては、今後、順次提示される標準仕様と現行の区の業務の差異を洗い出し、区民サービスへの影響の把握、業務プロセスや他システムへの影響範囲の特定などを行うため、まずは検討体制を整備していく必要があります。

 項目名称や連携方式の統一、法改正時の対応など標準化のメリットがある一方、委員御指摘のとおり、区民への行政サービスそのものや提供手段といった区独自の取組など、標準化にそぐわないものがあると認識しております。システムの個別カスタマイズは行わないこととされる中、システム機能からこぼれ落ちてサービスレベルを低下させないためにどうするかなど、慎重に検討することが必要と考えております。

 まだ具体的な検討や判断を行うことのできるレベルまで情報が提供されていない状況ですが、今後も国や業務システム側の最新情報の収集に努め、検討してまいります。

中里光夫 委員

独自のものがこぼれ落ちるんじゃないかという心配も今表明されましたけれども、大変なことだと思います。

 全庁的に業務内容を見直していくと、住民サービスへの影響も検討すると、コンピューターシステムの入替えまで行うと、これは大変な事業ですが、これを二〇二五年度までの僅かな期間でやると。しかも、標準化の内容はこれから国が決めるという乱暴なものです。自治体の負担、業務の負担は本当に計り知れないと思います。

 さらに、標準化、共通化の大きな問題に、自治体独自の住民サービスの抑制や制限の危惧があります。現在の世田谷区のシステムは、メーカーがつくるパッケージに多くのカスタマイズをかけています。標準化を進めることで、世田谷区独自の住民サービスはどうなってしまうのか。

 国は、政府がつくるガバメントクラウドの活用を進めるとしています。国はクラウドでのシステムのカスタマイズ抑制等に関する基本方針、先ほど答弁でもありましたカスタマイズするなと、こういう中で、富山県上市町という議会では、議会から自治体独自の国保の子ども均等割の提案が議員からありました。これに対し町長が、国が導入を進める自治体クラウドを採用しているから町独自のシステムのカスタマイズはできないんだと、こう言って、これを拒否したと、そういう答弁をしました。標準化の内容やシステムを理由に、自治体独自の住民サービスが制限される、そんなおそれがある、大変危険だと思います。

 個人情報保護については、世田谷区が積み上げてきたものを後退させるようなことがあってはなりません。システム標準化については、システムを理由に住民サービスが後退するようなことはあってはなりません。また、標準化に伴う区の負担は大変大きなものとなります。国の都合で無理強いするものではありません。地方自治、住民の福祉やプライバシー権など人権を守るために、以上の点について、国に対し声を上げ、地方の実情を発信していくべきです。副区長の見解を伺います。

宮崎 副区長

 まず、今、ICT推進課長のほうからは、実務としての部分で、これからどういうふうに詰めていくべきかということについて申し上げたところですけれども、先般、私のほうからは、他会派に向けまして、この問題につきまして、例えばDX、こういうものを進めていく中では、当然、このICTに絡むものとDXのそもそもの目的がどこにあるかということは、これはほかの会派からもいろいろ御指摘いただいていますように、要するに区民サービスの向上につながっていく、これがまず必要だろうということで、当然、いろんな方法論の中で、今般の話については受け答えもしていかなきゃいけない。

 一方で、今御指摘のあった個人情報保護法、ここにつきましても、区民にとって、それがいいものなのかどうか、ここが大切だと思っています。そういう意味では、今後、いろいろ情報提供も含めて御指摘いただけるものと思っていますけれども、当然、先ほど言った目的を失わずに、そのためには、必要とあらば国に対しても物申していかなきゃいけませんし、また、いろんな自治体、人口の動静を含めて動きが出たときに、他団体の動きのほうも見ておかなきゃいけない。ここによっては、世田谷区民そのものに障害が起きてもいけない。この辺のところに絡んでは、本当に国に声を上げて、それは決してやってはいけないというようなことの部分もやっぱり声を上げなきゃいけない場面もあるかもしれません。

 いずれにしても、国のほうがどういうふうな形で示してくるか、ここによりまして、いろんなシミュレーションを今やらせていますので、その部分で遅れを取ることのないように、区民にとって障害にならないような形でやりたい、こういうふうに思っております。

中里光夫 委員

今、個人情報のことについて、副区長、いろいろ述べていただきました。本当にしっかりやっていただきたいというふうに思います。

 もう一点、サービスのほうです。住民サービスの後退があってはならないと思うんです。システム標準化、コンピューターシステムのせいで、今までやっていたことができなくなるとか、新しい住民から、議会からの提案が実現できないというようなことあってはならないと思うんですが、それについてもしっかりと守り、国に対して物を言っていく必要があると思いますが、いかがですか。

宮崎 副区長

 先ほど申し上げたとおりで、当然、何を狙いでやっているかということについては、住民サービスの向上であるべきだというふうに考えますので、今まで、例えばカスタマイズと言われている部分についてで、ややもすると標準化していることによって、世田谷区オリジナルが、言ってみれば、これがまた負荷がかかっているということもあろうかと思います。ここは検証させてください。その上で、今までできていることの部分の中で、やっぱり住民サービスの後退につながるということになれば、今度、世田谷区として、どうしていくのかということをやはり判断しなきゃいけませんし、その情報を含めて、区民にもきちっとお示しをして、その上で判断をさせてほしいと、そういうふうに思っております。

中里光夫 委員

 住民サービスの向上、これは本当に絶対に握って離しちゃいけない問題だと思います。しっかりとやっていただきたいと思います。

民間活用の問題について

中里光夫 委員

 次に、民間活用の問題について質問します。

 この間、区立図書館や新BOP学童クラブの在り方検討が進められ、民間活用が検討の課題に挙がっています。

 新実施計画の行政経営改革の十の視点では、民間活用は、サービスの向上やコストの縮減が図れる場合に、行政の責任を明確にし、質の確保に留意しながら進めると。施策事業の効率化と質の向上として、政策目的に照らして最適な手法を選択し、効率的かつ質の高い行政サービスを目指すとなっています。

 ところが、この間の在り方の議論を見て、また現に指定管理が導入されている事業を見て、改めて行政経営改革の十の視点で検証する必要があると考えています。

 理由は三つあります。

 第一は、この間の在り方の議論、直営だと職員の専門性や職員の確保などの課題があると、その解決策として民間活用の議論が進められている。区として、これまで質の向上や人材確保、人材育成に十分な責任を果たしてきたのか、その検証や振り返りが不十分なまま、課題解決として民間活用を進めるのでは、公の責任、公的責任を果たしていないのではないか。

 第二に、時間延長などのサービス拡充は、本当に直営ではできないのか、きちんと議論して明らかにする必要があります。

 第三に、現に指定管理されている経堂図書館は、毎年赤字運営となっています。課題をどう解決していくのか議論が不十分なまま、指定管理を進める議論になっているんじゃないでしょうか。

 行政経営改革の視点であるサービスの向上、行政の責任、質の確保、行政目的、こういったものに照らしてどうなのか、これまで実施してきた指定管理者について、また在り方の議論について改めて検証するべきです。その上で、業務委託や直営も含めた最適な手法を検討するべきです。

 一般質問の答弁で、施設目的のために、施設運営やサービスなど区が果たすべき役割を整理した上で、民間を導入するメリットをしっかりと見極めることが必要、それぞれの施設機能が最大限発揮されることを目指し、その在り方について検証するというふうに答弁しています。どのように検証するのか伺います。

髙井 経営改革・官民連携担当課長

 民間活力の活用に当たりましては、施設の設置目的などに照らしまして、民間の創意工夫やノウハウの活用によって、サービスの向上、あるいは効率化、これらが図れる場合において、質の確保に十分留意しながら導入を進めているところです。

 現在、民間活力の活用による運営体制を検討しております区立図書館につきましては、公募区民あるいは有識者等で構成いたします検討委員会において、利用者アンケートの調査分析や新公会計制度を活用したフルコスト分析、民間評価機関による評価など、多様な観点から在り方の検証を行っているところでございます。

 公共施設の機能や運営の在り方を点検、検討するに当たりましては、施設の設置目的に対する成果の達成状況の確認と、職員人件費などを含みますフルコスト分析などによる行政評価、事務事業評価の観点からの検証を基本にいたしまして、利用者の声ですとか満足度の調査分析、他自治体の事例の研究など、多様な手法に基づく総合的な検証を行って、民間活用のメリット、デメリットを慎重に見極めながら、在り方を検討していくことを基本としているところでございます。

中里光夫 委員

 今、るる答弁いただきましたけれども、どのように検証するかということに対して、施設の設置目的に対する達成状況はいいんですが、それともう一つがフルコスト分析などの評価だと、結局、コスト偏重になっているんじゃないかと。十の視点ということで言えば、やはり行政の責任であるとか、質の確保であるとか、こういった点が重要であると思います。こういった視点からの検証をしっかり行う必要があると思いますが、いかがでしょうか。

髙井 経営改革・官民連携担当課長

 改めましてですが、施設の設置目的に絡みました区民サービスを適切に確保するとともに、これは質が保つということ、適切に提供して質が保たれるということは公共施設の設置者である区の責任でございますので、その観点も含めまして、運営の妥当性を適時検証するということが必要だと考えております。

中里光夫 委員

 行政の責任、質の確保をしっかりとこの視点での検証を行っていただきたいと思います。

 それでは、次の質問に行きます。

本庁舎整備について

中里光夫 委員

 次は、本庁舎整備についてです。

 本庁舎整備の工事事業者の入札が行われ、事業者が決定しました。区はこの間、公契約条例を遵守しながら、地域経済の活性化、地域経済への貢献を重視して事業者選定を行うというふうにしてきました。事業者選定について検討した世田谷区本庁舎等整備総合評価等検討委員会報告書では、地域貢献評価点についての検討が示されています。地域貢献評価点は、下請など地元企業への発注金額を評価するというものです。

 実際に行われた事業者選定で、地域評価点はどのような提案があり、どう評価されてきたのか。入札時の提示金額に対する達成状況を定期的に区のホームページで公表するとしてきました。提示した金額を実際に使っているかどうか、これをホームページで公表するとしてきました。どのように実施するのか伺います。

阿部 経理課長

 本庁舎等整備工事は、区では経験したことのない大規模な工事ということでありますので、区内経済への大きな波及効果が期待できるものと考えております。そのため、お話しありました施工者選定において、価格、施工実績、施工上の工夫に関する技術提案とともに、地域経済への貢献を総合評価方式における評価対象として落札者を決定いたしました。

 具体的には、工事の下請負契約、資機材の購入やリース、日常品の購入や役務の提供に関する契約等、施工に伴って生じる区内事業者への発注金額の提案を受け、地域貢献評価点として評価しております。

 落札者からの提案は、入札参加者の中で最も高い発注金額として評価され、現場作業所内に広報等を担当するコンシェルジュチームを開設し、区内事業者向けの窓口としても活用することで、事業者を広く募る方向性も伺っております。

 区といたしましては、契約の御議決をいただきましたら、落札者のこうした取組の周知に協力をするとともに、工事の着手後におきましては、施工監督の中で、区内事業者への発注状況の確認を徹底しまして、提案金額の達成度を定期的に区のホームページにおいて公表するなど、提案内容の確実な履行を確保しながら、幅広く区内経済振興に寄与するよう取り組んでまいります。

中里光夫 委員

 しっかりとこの取組を行って、地域にきちんとお金が回っていくと、そういう事業として、うまくいくように区としても取り組んでいただきたいと思います。

 世田谷区公契約適正化委員会答申書が報告されました。適切な労働条件の確保について、労働報酬下限額は下請業者も対象となるが、事業者等による認識が十分でないと指摘されています。下請業者で働く労働者も含め、公契約条例の実効性を高める取組の必要性が示されています。

 本庁舎等整備事業は、公契約条例の実効性を示すモデルとなってきます。下請業者への条例の徹底についてどう取り組むのか伺います。

阿部 経理課長

 公契約適正化委員会より今般いただきました答申におきましては、公契約条例についての事業者等の認知度向上及び実効性の担保のため、労働者向けに配付する労働報酬下限額の周知カードですとか、周知したことの確認書の作成といった具体的な提言をいただいているところです。

 一方、本庁舎等整備工事の落札者においては、工事の実施に当たりまして、一次下請事業者との契約時に公契約条例についての周知文書を配付するほか、工事の着手後につきましても、二次以降の下請事業者を含めた研修会や定例会の場にて啓発を図るなど、条例の遵守に向けた取組を徹底していくと伺っております。

 詳細は、議会の契約の御議決をいただいた後、落札者との協議にはなりますけれども、区といたしましては、答申にて御提言いただいた公契約条例の実効性担保の新たな取組につきまして、早急に具体的検討を進め、区内最大の公共事業である本庁舎等整備において、区内建設業界の働き方改革のモデルともなるような下請事業者を含めた労働者全員の労働環境の向上により、安全で高品質な施工を確保してまいりたいと考えております。

中里光夫 委員

 今までにないような、そういう取組をやるということですから、これは本当にしっかりと進めて、そして下請、孫請のところでも労働条件が確保できると、そういう状況をぜひともこの本庁舎整備の現場でつくっていただきたいと思います。

本庁舎整備、免震構造の安全性について

中里光夫 委員

 最後に、本庁舎整備、免震構造の安全性についての質問です。

 免震構造の建物と地面、地球側を分けるエキスパンションという部分がある。地震が起きたときに、ここを境に地面が別の動きをします。通常立ち入れないようにするなどの安全対策が取られますが、今回の設計では人が立ち入る部分に設定されており、危険ではないかと地域の専門家が指摘しています。万全の安全対策を取ること、専門家の意見をよく聞き、区民に丁寧に説明することを求めます。見解を伺います。

鳥居 施設営繕第二課長

 免震構造である新庁舎につきましては、建物と地盤面が異なる動きをすることから、建物の周囲には衝突防止のための隙間を設けております。この隙間にはバリアフリーへの配慮が必要な箇所には、地震時の建物の動きと合わせて可動する免震エキスパンションというものが設置される計画としております。

 東日本大震災では、多くの免震建物はその免震性能を発揮し、建物本体の被害は最小限であったものの、免震エキスパンションにつきましては、損傷事例も報告されています。これを受けまして、日本免震構造協会は、損傷原因の分析を行いまして、二〇一三年にはガイドラインをまとめております。

 本庁舎等整備におきましては、本ガイドラインを踏まえた計画としておりますが、施設利用者には免震建物は可動することを広く周知するとともに、地震時には、その可動範囲に入らないように、誰にでも分かりやすい表示などの工夫に努めてまいります。

 工事におきましては、契約の御議決をいただいた後には、落札者としっかり連携をし、安全第一で工事を進めてまいります。また、免震技術等の最新の知見にも目を配りながら、区民からいただく様々な御意見につきましても、引き続き参考にさせていただきながら、安全で着実な工事進捗に努めてまいります。

中里光夫 委員

 終わります。

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