予算特別委員会 令和3年3月22日

2021/03/22

質問項目

 

区立図書館の在り方検討について

中里光夫 委員

 それでは、日本共産党の文教分野の質問を始めます。

 私からは、区立図書館の在り方検討についての質問をしたいと思います。

 一般質問でも確認しましたが、新実施計画の行政経営改革の視点には、サービス向上とコスト縮減が図れる場合は、行政の責任を明確にして、質の確保に十分留意しながら民間活用を進めるというふうにあります。区がこれまで行ってきた区立図書館の民間活用でどのようなサービス向上があったのか、区の認識を伺います。

谷澤 中央図書館長

 これまで地域図書館では、世田谷図書館、梅丘図書館に窓口等の運営に関する一部業務委託を、経堂図書館に指定管理者制度を導入し、民間活用を図ってまいりました。

 民間事業者のサービス向上では、開館時間の拡大をはじめ、最新の設備機器の導入や、他自治体での経験を生かした講座やイベントといった事業企画などの取組がございます。設備機器の導入例としましては、座席管理システムの導入や書籍消毒機、デジタルサイネージの設置などがございます。また、事業企画の例としましては、各種ワークショップの開催のほか、世田谷区産業振興公社と連携した企業入門セミナーやおしごと相談、区内障害者施設の自主生産品の販売などがございます。

 また、積極的な地域連携の取組としまして、指定管理者の経堂図書館では、近隣の東京農業大学と連携した講座を毎年開催しております。

中里光夫 委員

 最新機器の導入であるとか、他の機関と連携したセミナーとかというお話ですけれども、これはどれも直営でできることばかりじゃないかと、これはあり方検討委員会の中でも指摘をされて、区は明確な答えができていなかったと思います。そもそも何のため、そういうことをやるために民間活用をしたのかということだと思います。

 それから、開館時間の延長について述べられていませんけれども、今のお話ではなかったんですけれども、開館時間の延長というのはサービス向上と捉えていないということなんですか。

谷澤 中央図書館長

 開館時間の延長もサービス向上というふうに認識しております。

中里光夫 委員

 これまで、民間活用で二十一時まで開館時間が延長された、このことを区は大変強調してきたと思います。開館時間の延長については今後も進めるべきかどうか検討が必要な時期なんじゃないかと思います。

 利用者アンケートでも、時間延長の要求は一三%程度で低いと。それから、コロナ後の社会をより公正な社会にしていく視点、これは大事だと思います。コロナで生活スタイルが変わり、働き方改革も叫ばれている。長時間労働の是正が進められ、夜遅くまで働く働き方を変えていくべきだと、まさにそういう働き方の転換を自治体が率先してやっていくべきじゃないでしょうか。今後、夜間、長時間開くことはどうなのか、検討が必要だと思います。

 それから、コストについて。世田谷区立図書館等施設概要及び行政コスト計算書、平成三十年度決算、令和元年度決算というのが、このあり方検討委員会に示されました。こういう大変細かい数字が並んでいる資料なんですけれども、これは新公会計制度によって図書館ごとの行政コストが明らかになったとして示されました。各館ごとに、人件費だとか、貸出し一冊当たりの行政コストなどが書かれておりました。この計算書について詳細を見ていきたいと思います。

 図書館の規模や築年数などがコストに影響しているんじゃないかと、私はこう考えてみまして、見てみました。ところが、ばらばらで全然規則性が見えてこないんです。よくよく調べてみますと、単独の施設もあれば、複合施設もある。複合施設についても、小規模なものからホールと一緒の大規模なものまであると。条件があまりにも違うので単純に比較できないというふうに思いました。

 それから、人件費についても確認しようと思いましてこれを見てみますと、各館の職員の数が出されていないんです。人数が分からなかったらよく比べられないじゃないかということで、比較のしようがないと思いまして、私、職員名簿から各館の人数を数えました。働き方を聞いてみますと、非常勤の職員は勤務パターンが複数あって、単純に人数で比較できない。比較できるのは常勤職員ということで、常勤職員一人当たりの人件費を各館ごとのデータから出してみました。

 そうしましたら、結果は約五百三十万円から九百万円と館ごとにかなり開きがある結果が出てきました。これは職員の年齢構成などで大きく変わってしまうんじゃないか、五十代近い職員と新入職員では大きく賃金が違いますから、施設や職員配置の条件が様々で、館ごとのコストはばらばらだということがこの資料を調べて分かりました。

 また、本の貸出数についても、駅に近いかどうかなどの立地条件に大きく左右される。このようなデータを基に、貸出し一冊当たりのコストを比較することに意味があるとは思えないというふうに私は思いました。

 ただ、この一冊当たりのコストが比較できるデータが一つありました。それは、梅丘図書館です。梅丘図書館は、直営のときと、カウンター業務を業務委託した後のデータ、この二つが出ていました。これを比較すれば、カウンター業務委託の前と後の比較ができるということでこれを見てみました。そうしますと、委託のところの人件費も含めた人件費相当分合計という数字が大きく下がっています。約二千六百四十万円下がっているんですが、私の試算で常勤職員の平均の三・五人分に当たります。梅丘図書館の人件費相当分合計が平成三十年と令和元年を比べると大きく下がっていますけれども、なぜそうなったのか区の認識を伺います。

谷澤 中央図書館長

 運営体制を検討する上での一つの指標ということで、令和元年度決算と平成三十年度決算における施設別の行政コスト計算書を作成し、比較検討いたしました。令和元年度に直営から窓口業務等の一部業務委託を導入した梅丘図書館について検証したところ、人件費として年間約二千六百万円が委託することで下がったという状況になっております。

 梅丘図書館は、委託後の令和元年度から、休館日の月曜を開館し、平日十九時までの開館時間を二十一時に延長するなど、年間の開館日が四十三日、開館時間が一千二十七時間の拡大をした上での人件費となっております。区が定める労働報酬下限額を適用した上での人件費でございますので、民間事業者の柔軟な職員シフトによる効率的な運営によるものであると考えております。

中里光夫 委員

 開館日が四十三日、開館時間が千二十七時間拡大したと。開けている時間が大きく延びた中での人件費が減ったということですね。労働報酬下限額を守っているのは、公契約条例があるんだから当然のことですけれども、これは、いわば世田谷区が定めた最低賃金です。その最低賃金を守っているというだけで本当にいいのか、最低賃金のアルバイトを大量に雇っているというようなことはないのか。そういうアルバイトばかりで、安定雇用に反する、職員の質が下がる、そういう心配はないのかということがあると思います。

 なぜ民間委託をすると人件費が安くなったのか、ここが問題だと思います。梅丘図書館の職員数、平成三十年は正規職員十人、嘱託員が十五人、令和元年は正規職員五人、委託先の職員が十四人、登録人数で六人減っています。また、非常勤の勤務形態は複数あるということもあります。

 委託先費用も、正規、非正規がどうなっているか正確には分かりませんので、単純に人数を比較することはできないですけれども、四十三日、千二十七時間拡大した上で常勤職員の三・五人分の人件費が減っているわけですから、これは賃金が下がっているか、それとも人数が減らされているか、またはその両方が行われているということじゃないでしょうか。人件費の削減でサービスの低下はないのか、質は保たれているのか、公的責任は果たされているのか、その検証が必要だと思いますがいかがでしょうか。

谷澤 中央図書館長

 梅丘図書館は、令和元年度から業務の一部を委託しております。業務内容は、仕様書で規定をしておりまして適正に履行されております。図書館運営体制あり方検討委員会におきましては、運営面、サービス面の質を利用者の視点を含めて恒常的にチェックする図書館運営協議会のような体制の整備が必要であるとの御指摘をいただいているところでございます。

 今後、検討委員会からの報告書を受けまして、具体的な取組について検討してまいります。引き続き、サービスの充実内容と経費のバランスが適正となるよう区としてしっかりと対応してまいります。

中里光夫 委員

 図書館協議会のような体制の検討というお話もありましたけれども、サービスの質がどうか、きちんと守られているかということを見るのは、役所の責任でやるべきじゃないでしょうか。公的責任を果たす、役所の責任、ここをどのように考えているか、お答えください。

谷澤 中央図書館長

 梅丘図書館につきましては業務委託で、仕様書で内容を定めておりますけれども、しっかりその内容が履行されているかの検査をしっかりやっていくように、区として当然対応していきたいと考えております。

中里光夫 委員

 区は、しっかりと公的責任を果たして、質の低下がないのか検証し、ただしていくことが大変重要だというふうに思います。区は、民間活用は政策目的に照らして導入するとこれまで言っています。今進めようとしている民営化が、知と学びと文化の情報拠点という区立図書館の政策目的を進めることになるのかが問われてくると思います。時間延長、人件費削減、それでいいのかということがあるんじゃないでしょうか。このまま全館民営化などが進めば、職員を低賃金の民間職員に置き換えていく、これが進んで、政策目的に逆行して、図書館を支える人材がいなくなってしまうんじゃないでしょうか。

 公立図書館は、その利用者があらゆる種類の知識と情報をたやすく入手できるようにする地域の情報センターです。その役割を果たすためには、専門性を持った司書職員の存在が欠かせません。司書の専門性の蓄積、長期にわたるコレクションの形成、長期にわたる安定した職員の体制が欠かせません。定期的に契約先の見直しのある指定管理者や、人件費を削減し、不安定な雇用の民間事業者に業務を任せることは公立図書館にふさわしくありません。あり方検討委員会では、教育基本法、社会教育法、図書館法の趣旨にのっとり直営を基本とするように報告書に明記せよ、それから、直営を基本としながら人材育成を進めることだ、それを市民が点検するために図書館協議会のようなものをつくるべきだ、こういう意見が続きました。民間活用を広げるのではなく、直営を基本に質を高める努力を進めるべきです。そうした方向が区立図書館が目指すべき方向だと私は考えます。

 一般質問で、特別区の人事制度として、司書専門職の採用はないと答弁がありました。将来的には、区として司書の専門職を置くことができるよう制度を変えていくことも含めて取り組んでいくべきだと思います。当面、今の人事制度の中で司書を増やし適切に配置することや、必要な研修なども行い、スペシャリストを育てる必要があると考えます。今の制度の下でも、区の職員で司書の比率を高めること、スペシャリストの職員を育てることは可能ではないか、見解を伺います。

谷澤 中央図書館長

 司書専門職の採用を行っていないため、区職員における司書資格保有者の割合は、正規職員、非常勤の図書館嘱託員ともに約三割という状況でございます。また、図書館の実務経験が長く研さんを積んだ職員もおりますが、定期的な人事異動や定年退職などにより安定的な専門職員の配置が難しいという状況がございます。

 こうした状況を踏まえまして、図書館運営体制あり方検討委員会では、区の職員の専門性を維持することが課題の一つに挙がっておりまして、民間活用を図る場合にも、区職員が民間事業者をマネジメントできるように人材育成計画を作成する必要性が指摘されております。

 司書資格者の割合を高め、職員の専門性を高めるためには、図書館ビジョンにも、外部への司書資格取得研修派遣、専門研修の実施などを計画し実施しておりますが、より一層専門性の高い人材育成を推進していく必要がございます。区職員の司書資格保有やジョブローテーションを含めた実務経験の状況などを踏まえながら、館長をはじめとする司書等のスペシャリスト職員を計画的に育成し、職員の専門性維持向上を図ってまいります。

中里光夫 委員

 やはり図書館は専門的な職員がどれだけしっかりと仕事をするか、職員の質がまさに問われる分野です。人材の育成、これをしっかりと進めていただきたいということを求めまして、私からの質問を終わります。

 

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