予算特別委員会 令和6年3月11日(区民生活領域)

2024/03/11

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質問項目

 

質問

気候危機対策、脱炭素の促進について

中里光夫 委員

 それでは、私からは気候危機対策、脱炭素の促進についての質問をします。

 二〇三〇年までにCO2排出量を半減し、二〇五〇年までに実質ゼロを実現することが私たちに課せられたミッションだというふうに思います。世田谷区も積極的な目標を設定しました。その実現のための具体的な取組をこれから進めていくというときだと思います。また、気候危機を打開するための省エネルギー、再生エネルギーへの転換、これは新しい需要と雇用を生み出して地域の循環型経済の発展を進める持続可能な経済社会への鍵を握っている、こういう問題だというふうにも思っています。

 まず最初に、化石燃料に依存した電源から再生可能エネルギーへの転換を促進するという問題について質問します。

 化石燃料に依存した電源を再生可能エネルギーに転換することが必要です。ところが、今の岸田政権は、いまだに石炭火力に固執して、先進国で唯一、石炭火力からの撤退期限を明示していない国になっています。日本は、グリーンウオッシュ、見せかけの環境対策だというふうに世界から批判され、毎回のように化石賞も受賞しています。

 世田谷のCO2排出を見てみますと、ある研究者が一九九〇年から二〇一八年の経産省の都道府県別エネルギー消費統計を基に試算した計算があるんですが、分野別では、家庭部門が四九%、業務二七%、運輸一七%というふうになっているんですが、エネルギーのもとが何なのかというところに着目して整理し直してみますと、購入電力が五八%、かなりの多くを占めております。CO2を排出しない電源に切り替えることの大切さというのが、この世田谷でCO2を減らすということで、この問題、大切だということが分かります。

 COP28では、化石燃料からの離脱が宣言されました。国にエネルギー政策の転換、化石燃料依存の電源から再生可能エネルギー由来の電源に切り替えることを強く求めていく、このことは大事だと思います。太陽光発電は最もコストの低い発電方法と今はなっています。今後さらに下がっていきます。電力は自由化され、消費者は市場で自由に電力を選ぶことができるようになってきました。ですから、世田谷では自宅の太陽光発電で全てを賄うというのは無理がありますから、電力会社が自然に再生可能エネルギーへ転換するのを待っているということではなくて、再生可能エネルギーを選んで購入する、積極的にこれを選んで使っていく、そのことが区内のCO2排出量削減には欠かせない要素だというふうに思います。

  世田谷区役所の本庁舎などでは、世田谷版RE一〇〇と銘打った積極的な取組が行われていて、これも評価しますけれども、区民への普及がどうなっているのかというのも大きな問題だと思います。

 区として再生可能エネルギーの電気を選んで購入するよう電気の切り替えを区民に促すこと、これが重要だと思いますが、現状はどうか、区としてどのような取組をしているのか伺います。

山本 環境・エネルギー施策推進課長

 区民の再生可能エネルギー電力の利用促進を図るため、区では今年度より、省エネポイントアクション事業に再エネ電気コースを新たに加え、電気契約を再生可能エネルギー一〇〇%電力に切り替えた御家庭や事業者の方々に、せたがやPay一万ポイントを付与する再エネポイントアクション事業を開始いたしました。本事業の今年度実績は、申請数三十一件のうち、ポイント交付実績数は二十件となっており、区民、事業者への再エネ利用促進は道半ばと認識しております。

 引き続き、これらの再エネ利用促進の取組を継続するとともに、さらに再生可能エネルギー利用電力への切り替えが進むよう、効果的なPRやブランディングを行ってまいります。

中里光夫 委員

 この一万ポイントという大変な補助をつけても実績が二十件ということで、本当に制度そのものが知られていないんだというふうに思うんです。これは区民にもっともっとアピールしていかなきゃいけない。例えば「区のおしらせ」の一面全部を使った大々的なキャンペーンを張るぐらいの、そのぐらいのインパクトで区民に訴えていく必要があるんじゃないでしょうか。

 それから、国に対しても区から意見を上げていく、エネルギー転換を図っていく、そのことが必要だと思います。化石燃料にしがみついている電力会社に気兼ねをして力が入らないということではなくて、気候正義の立場で、積極的に、大々的に進めていただきたいというふうに要望します。

 では次に、家庭部門での脱炭素化について話を進めたいと思います。家庭部門の脱炭素化を進めるには、それぞれの家庭で太陽光発電などの設置、再生可能電力の購入の検討、それから、節電効果の高い空調や給湯に切り替え、冷蔵庫や照明などの機器への買換え、それから住宅の断熱化、電気自動車への買換え。こういった既存の技術で効果もあって、それから運転コストの低減につながって経済メリットもある、こういう方法が既に確立されているというふうに思います。

 先日テレビで、東京都が窓の断熱のために内側に窓をつける工事、これに百万円までの補助をするというニュースが流れていました。窓サッシのメーカーが増産体制で構えていると、産業界も期待しているようなことが報道されていました。

 国や都には様々な補助制度があり、世田谷区にもエコ住宅補助制度もあり、いろんな制度があります。こうした省エネ・再エネ普及のための制度、様々な分野にまたがっていたり、また、それぞれ専門的であったり、区民に十分知られていないんじゃないかというふうに思います。家庭の脱炭素化に関して、都と区で行っている現状の補助制度、それぞれどのようなメニューがあるんでしょうか。

山本 環境・エネルギー施策推進課長

 まず、都の補助制度では、災害にも強く健康にも資する断熱太陽光住宅普及拡大事業において、住宅に対する各種補助を実施しており、補助メニューには太陽光発電システム、蓄電池システム、高断熱の窓、ドア、断熱材の設置、太陽熱利用システム、地中熱利用システム、高効率給湯器エコキュート、それから家庭用燃料電池エネファーム、V2Hといった設置がございます。各補助金の補助率は三分の一から十分の十までと幅があり、補助上限額は一住戸当たり五万円から最高で百万円までとなっております。

 一方、区のエコ住宅補助金はほぼ都と同内容の補助メニューで、補助率は十分の一から十分の二、一部メニューでは二万円から七万円の定額補助で、上限金額は二十から四十万円となっております。

 都と区の違いでは、地中熱利用システムV2H、断熱ドアの設置については都制度のみとなっており、屋根の高反射率塗装工事については、区独自のメニューとなっております。

中里光夫 委員

 実に様々な制度があるということが分かると思いますが、これらの制度の活用状況、それから、区における家庭部門の脱炭素化の進捗状況、現状の取組を含めて、区の見解を伺います。

山本 環境・エネルギー施策推進課長

 区のエコ住宅補助金の令和五年度申請実績では、高断熱窓への改修が八十四件、太陽光発電システムが百五十二件、蓄電池システム二百五十二件、太陽熱利用システム一件、その他のメニューも合わせて全体で九百六件となっております。

 国の住宅・土地統計調査からの推計になりますが、補助金などがなかった場合に想定される断熱改修の年間件数は一千百戸程度ですが、国、都、区の補助制度によって、今年度は年間約五千五百戸が断熱改修されており、約五倍ほどに環境配慮型の住宅改修が増えていると見込まれます。

 区では、二〇三〇年度までの住宅改修によるCO2削減目標を五千五百トンとしており、年間約七百トンの削減が必要ですが、今年度のエコ住宅補助では約八百トンの削減を達成しております。しかしながら、事業部門や運輸部門などの脱炭素化を牽引するためにも、家庭部門の脱炭素化をより一層進めることが重要であり、住宅改修による脱炭素化をさらに拡大する必要があると考えております。

 今後は補助金事業を強化していくとともに、住宅改修の補助金事業だけにとどまらず、区民の脱炭素化、ライフスタイルの転換を推進する支援策やPRキャンペーンなど、効果的な方策や手段を総合的に再構築し、家庭での脱炭素化をさらに取り組んでまいります。

中里光夫 委員

 この補助制度を使うことで五倍になったということで、成果は出てきてはいると思うんですが、まだまだ少ないと思うんです。私の周りの知り合いなんかに聞いても、断熱工事をやったよという人にはほとんど当たりません。周りにそういう方はほとんどいない。まだまだ足りないと思います。

 具体的に区民がこういった対策を打とうと思うと、どういうときにどんな対策があるのか、さらに効果とコストはどうなのか、こういうことを検討して判断することになるんだろうというふうに思うんです。そういった情報が区民に行き渡ることが必要なんだろうと思います。

 それはどういうときかというと、例えば家電製品や車の更新のときどういうものを選ぶのか、あるいは住宅の建築やリフォームのときにどのような工事をすれば、どういう効果が得られるのか、それから長期的な光熱費はどうなるのか、どんな補助制度が使えるのか。さらに、太陽光や再エネを導入しようとしたらどうなるのか。また、信用できる業者はどうなっているか。

 こういった機会機会にきちんとそういう判断ができる情報が区民に伝わっていることが大事だと思うんです。この不安を解消し、住宅の事情に沿った取組内容を納得して導入してもらうためには、区民が気軽に専門家に相談できる仕組みや、個々の事情や考えに沿った取組メニューの提案など、より踏み込んだきめ細かやかな支援が必要だというふうに思います。専門家派遣など区が率先して行う。成城をモデル地区に進めるという話ですが、そこで積極的な取組を行って、その成果を全区に展開するそういったこともぜひ進めていただきたいと思います。区の見解を伺います。

上原 環境計画課長

 まず、私から、成城地域での取組についてお答えをいたします。

 区では、家庭の脱炭素化に向けて地域づくりと一体で様々な実証事業を行っていくため、成城地区を対象とした脱炭素地域づくりの取組の検討を行っており、あわせて国の脱炭素先行地域制度への応募も検討しているところでございます。成城地区では、交付金を活用し、エリア全体への幅広くきめ細かなPR活動と、個別の事情に応じた丁寧な相談対応、個々の住宅の事情に応じた取組メニューの提供、安心して契約いただける仕組みなど区民が家庭での脱炭素を不安なく行っていけるモデルの構築に向けた検討を進めております。

 また、住宅だけではなく、暮らし全般の行動変容を働きかけていく仕組みや地域課題解決につなげていくための取組を、脱炭素と併せて地域で行っていきたいと考えております。現在、地域への説明や事業者との協議などを行っており、本年六月に予定されております脱炭素先行地域の応募に向けて引き続き検討を進めてまいります。

山本 環境・エネルギー施策推進課長

 全区展開についてお答えいたします。来年度より全区で展開する家庭における脱炭素に関するマーケティング調査や、これまでの支援策の再構築、PR事業は、幅広い区民へ家庭における脱炭素に取り組んでいただくため、区民の関心がどこにあるのか、脱炭素活動に踏み出せない要因は何かを明らかにし、行動変容を促すことができる情報発信や、お話しのようなきめ細かなサポートを構築するものでございます。現在も世田谷区住宅相談連絡協議会と連携して住宅改修等の相談を受けているところですが、さらに、これを充実させることを考えております。

 成城地区のモデル構築と並行し実施する中で、成城地区における成功事例で全区に転用できるものは積極的に制度化し、また、全区の取組で成城地区に転用できる部分は有効活用し、二つの事業が相乗的に最大の効果を得られるよう、確実に進めてまいります。

中里光夫 委員

 本当にそういった相談ができる仕組みをつくる中で、広い区民の皆さんがこうした問題に取り組むように進めるように頑張っていただきたいと思います。

 今の話、多くは戸建ての持家の話だったと思うんですが、戸建ての持家だったら、その家をどうするのか何をやるか、それを全部自分で決めることができます。しかし、分譲マンションでは違った事情があります。分譲マンションは、住民みんなが共有する部分と、個人が占有する部分に分かれています。マンション全体や共有部分については、管理組合として住民が話し合って物事を決めていかなくてはなりません。

 電気自動車を購入する場合も、戸建てなら充電設備の工事は自分の判断でできますが、マンションでは駐車場は共有部なので、充電設備を入れるのも、管理組合としての対応となっていきます。マンションの管理組合といえば、都市整備部門でマンションの耐震化の問題とか、管理不全マンションの調査など、こういった取組が行われてきました。区内のマンション事情に都市整備分野ではしっかり把握して取り組んできていますけれども、こういう状況、区内のマンションの管理状況、組合の状況などの把握、こうした都市整備部門などとも連携しながらマンションの脱炭素化を進める必要があるんじゃないでしょうか。

 以前質問したマンションへの電気自動車の充電設備補助の導入、その検討状況と分譲マンションに対する支援策について、区の見解を伺います。

山本 環境・エネルギー施策推進課長

 区内の戸建て住宅が約十万四千戸であるのに対し、共同住宅は三十一万五千戸と戸建て住宅の約三倍に上ることから、住宅の脱炭素化は戸建て住宅だけでなく、共同住宅、マンションでも同時に進めていかなければならない課題であると認識しております。

 特にマンションの脱炭素化には持家か借家かという点や、マンションの管理形態、共用部分と各住戸におけるアプローチにそれぞれ特有の課題があり、取組の工夫が必要なため、まずは居住者や所有者に対するマーケティング調査や分析から検討してまいります。

 また、お話しのありましたマンションへのEV充電器導入につきましては、今後エコ住宅補助の政策効果を検証しつつ、さらに対象やメニュー拡大を検討する中で、先ほどの調査分析を踏まえ検討してまいります。

中里光夫 委員

 ぜひこの分野も前に進めるように頑張っていただきたいと思います。

業務部門の脱炭素化について

中里光夫 委員

 次に、業務部門の脱炭素化についてです。

 以前の質問で、脱炭素化に向けた総合的な相談窓口を区として取り組むよう求めました。その後の検討は進んでいるのか、見解を伺います。

髙井 商業課長

 区では、産業振興公社に中小企業診断士などの専門家を配置いたしまして、中小企業の総合的な経営相談の体制を整えておりまして、多くの事業者の相談に対応しております。その中で、脱炭素化についての相談は、事業者の脱炭素への取組のメリットや重要性などを御説明するとともに、その方策なども交えてアドバイスを行っております。

 相談内容が、脱炭素化の取組によります環境改善効果、あるいは技術的な実施手法などといった専門的な知識が必要な内容につきましては区の環境政策部で、また、導入に当たっての資金調達や経営改善といった内容につきましては融資・経営相談で、脱炭素化の取組に対する助成あるいは相談などにつきましては、東京都を案内するといった役割分担をしながら事業者の支援をしているところでございます。

 経営の専門家と環境の専門家とは分野が異なることもありまして、両面の体制を一か所で併せ持つということにつきましては、効率性の観点などから十分検討する必要があると存じますが、産業部門と環境部門、区と都など様々な窓口が的確に連携をいたしまして、中小企業が脱炭素化に積極的に取り組む環境づくりに努めてまいります。

中里光夫 委員

 国や東京都の総合窓口もパンク状態だということですから、区がこうやって相談対応できるんだというのを示していく、つくっていくというのは非常に大事だと思います。しかし、相談を待っているだけでいいのかという問題があると思います。

 区が行った産業基礎調査アンケート結果報告書を見ますと、脱炭素への取組に関心を持っているというのは一二・五%、脱炭素についてハード面での取組をやっている一四・二%、そもそも関心が低いと。

 この業務部門ですが、先ほど住宅でいろいろ言いましたが、業務部門の場合、例えばお店をオープンするとか移転するとか、改装するとか、それから機械や自動車を更新するとか、そういう機会を捉えて再エネ、省エネを促進するようなアドバイスができるような、そういう仕組みが必要なんだと思います。こうした取組なしに進まないと思いますが、見解を伺います。

髙井 商業課長

 御紹介の産業基礎調査によりますと、お話しのほかに、国や都などの環境に関する支援制度、あるいは認証制度などについての認知度も低いというふうなことが明らかになっております。これを受けまして、区としましては、今策定中の地域経済発展ビジョン案に、区として情報発信、あるいは普及啓発に取り組むということを重点事業として位置づけているところでございます。これに基づきまして積極的な発信に取り組んでまいります。

中里光夫 委員

 終わります。

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