2024/06/12
通告に従い、質問します。
初めに、保育待機児についてです。
四月の保育待機児は、昨年の四十八人から十人増えて五十八人となりました。その内訳は、砧・烏山地域で一歳児、二歳児の待機児が増えています。区全体では、未就学児人口は減っていますが、入園申込者数は横ばいです。しかし、砧・烏山地域は、ゼロ歳人口より一歳人口が増えており、ファミリー層の転入が推測されます。また、育休制度の普及で、ゼロ歳からではなく一歳、二歳からの保育を希望する方も増えているのではないでしょうか。また、ゼロ歳児は四月時点で空きがありますが、年度の後半になれば埋まってしまいます。子どもは年間を通じて生まれてくるからです。昨年十二月の認可外保育施設での痛ましい死亡事故の例のように、十月に産まれて、認可保育園に入れず、ベビーホテルなどを利用せざるを得ない状況があります。年度の後半ではゼロ歳児の待機児が発生しているのです。
待機児をなくし、保育を必要とする人に保育を提供するのは、自治体の責務です。ゼロ歳、一歳、二歳の待機児解消のための受皿を増やす必要があります。ゼロ歳・一歳・二歳児の待機児解消のために、区立認可保育園を増設して対応することを求めます。区の見解を伺います。
私立保育園の収入は、保育する子どもの人数に応じた保育料と補助金で成り立っています。定数に欠員が出れば、その分、収入が減ります。年度前半のゼロ歳児の空きで保育園の収入が減りますが、ゼロ歳児は年度の途中で入園してくるので、職員は確保する必要があり、経営を圧迫しています。
保育の質を守るためには、質の高い保育士を確保することが条件です。世田谷区は、保育室の制度で、保育室の収入をその時点の子どもの数で決めるのではなく定数に応じて決める定員定額制を取ってきました。世田谷区の保育室を守ってきた制度でした。国の責任で認可保育園でも定員定額制を制度化すべきです。
保坂区長も自著で、保育利用者をカウントして、空きが出ると事業者の持ち出しになる制度ではなく、保育事業者への定額払いによる支援や、通年入園可能な制度に国が変えていく必要があると書いています。区として国に対し制度の改善を求めるべきです。
国がやるまでの間、自治体が独自に補助をする必要があります。既に二十三区中十五区で、九月までの欠員の補助であるとか、基本単価の八〇%を下回った分の補助、欠員に対する一定の補助など、何らかの補助制度を行っています。定員定額制の実施を国に求めること、国が実施するまでの間、区としてゼロ歳児の空きに対する補助を行うことを求めます。見解を伺います。
次に、保育士の確保についてです。
六月三日に、子どもたちにもう一人保育士をと運動している保育関係者の集会が国会内で行われました。長年の保育関係者の運動の結果、保育士配置基準について、政府の未来戦略に「二〇二四年度から、制度発足以来七十五年間一度も改善されてこなかった四・五歳児について、三十対一から二十五対一への改善を図り、それに対する加算措置を設ける」と記されました。
しかし、保育士一人当たりの子どもの数は、欧州先進国の水準からは大きく立ち遅れています。集会を行った団体が実施した全国保護者アンケートでは、四歳児、五歳児の子どもについて、保育士一人が見る子どもの数は何人が安心できますかという問いに対して、多くは十人から十五人と、現在の基準の二倍を求めています。また、不適切な保育をなくすための必要な対策として保育士配置基準の改善を求める声は、回答者の九四%にも及びました。トイレに行くのもままならず、膀胱炎が職業病と言われる状態を解消し、子ども一人一人に向き合い、子どもの発達や意見表明など、子どもの権利を守る保育を進めるためには、さらなる保育配置基準の改善が必要です。
世田谷区の区立保育園の現状は、新たな保育士配置基準に対し、欠員がある状態です。産休、育休の補助体制も不十分、その都度欠員が増えていく状態です。休憩時間が取れていなくて労働基準監督署から指摘がありましたが、対応は十分なのか。人を増やさずに、休憩を取りましょうと注意喚起のポスターを作って、現場からひんしゅくを買いました。
産休や育休の補助や緊急時の対応を考えれば、育休が発生してからその都度採用する任期付採用ではなく、人員に余裕を持たせて、機動的に職員を配置できる体制こそつくるべきです。欠員解消、産休・育休補助体制確立のために、任期の定めのない職員の二次募集を行うことを求めます。見解を伺います。
次に、夏の猛暑から子どもたちを守るための対策についてです。
私立保育園の園長さんから、夏の猛暑にエアコンの効きが悪いので、窓を二重にして断熱効果を上げようと考え、保育課に補助制度などを問い合わせたが、何もないという返事だった、仕方なく自費で工事した、こういう話を伺いました。この話を聞き、環境・エネルギー施策推進課に問い合わせたところ、東京都の補助制度が使える、こういう回答でした。こうした情報を伝えると、その事業者は、今年二園目の工事を検討していたと。そこでは補助制度を活用することになりました。
この十年で約二百もの新しい私立認可保育園が区内にできましたが、猛暑の中で同じ悩みを持っている施設も多いのではないでしょうか。子どもたちの健康のためにも、脱炭素化を進めるためにも、保育園の断熱化、省エネ化を進める必要があります。しかし、公共施設には公共建築物ZEB指針がありますが、私立認可保育園などの民間施設は国の建築に関する一般的な規定があるだけで、省エネ、再エネの推進は事業者の自主性に任されています。
区が補助金を出している民間福祉施設などについて、区が積極的に断熱化、省エネ化、再エネ化を誘導するガイドラインのようなものをつくり、国や都、区の補助制度や最新の技術動向などを積極的に情報提供したり相談に応じる、そういう仕組みをつくってはどうか。区の見解を伺います。
次に、深刻な小中学校の教室の断熱化についてです。
昨年の議会で、真夏の教室が冷房が効かず、あまりの暑さに教室で授業ができない、特別教室や図書館に逃げ込んでいる、こういう現状をお話ししました。区は、教室の断熱化について、昨年の議会質問を受けて、まずは今年の夏に、輻射熱により空調設備の効率が下がる校舎の最上階の断熱化を図る実証実験をモデル校にて取り組むとしています。
そもそも、真夏の教室の温度環境がどうなっているのか、教育委員会に聞いても実態がつかまれていません。文部科学省は、学校環境衛生基準を定め、気温は十八度から二十八度Cであることが望ましいと定めています。区内の学校の教室の環境がどうあるのか、その状態を測定し、教育委員会として把握することがまず必要じゃないでしょうか。
文部科学省は、今年の三月に学校施設のZEB化の手引きを発表しました。その中で、「改修ZEBのススメ まずは断熱改修から」、こういって、将来のZEB化への大規模改修を見据え、緊急に屋根などの断熱改修を行うことを推奨しています。今回行う実証実験を基に、全ての教室の環境を教育環境としてふさわしいものにする必要があります。いつまでに改修するのか、さらにその先のZEB化をどう進めるのか、具体的な計画を示すことが必要です。
今年の実証実験はどのように実施し、どのように効果の検証を行うのか。今後の計画的な暑熱対策のために、全国規模での実態調査の実施と公表、目指すべき温度環境水準を定めた整備目標の設定、具体的な工事計画、実施年度を定め、区民に知らせていくべきです。今後の学校の暑熱対策をどのように進めるのか、見解を伺います。
以上で壇上からの質問を終わります。
私からは、保育に関し三点御答弁いたします。
初めに、ゼロ歳・一歳・二歳児の待機児童解消のために区立認可保育園を増設して対応せよとの御質問についてです。
令和六年四月入園における保育待機児童は、議員御指摘のとおり、昨年四月から四十八人増加し、砧地域の一歳児で二十六人、二歳児で十三人、烏山地域の一歳児で十九人、計五十八人の待機児童が生じました。
一方で、区では、四歳児、五歳児を中心に生じている保育施設における欠員が課題となっており、これまで区が積極的に整備してきた私立保育園の経営への影響が懸念されることから、令和七年四月入園に向けましては、既存保育施設を活用した一歳児を中心とする受入れ枠のさらなる拡充を軸に、取組を進めてまいります。
今後、令和七年度からを計画期間とする次期子ども・子育て支援事業計画の検討において、議員御指摘の点も含め、中期的な保育需要を見定めた上で、低年齢児を中心とした待機児解消に向けた対策を検討してまいります。
次に、定員定額制の実施を国に求めるべき、また、国が実施するまでの間、区として補助を行うべきとの御質問についてです。
令和六年四月の私立保育園のゼロ歳児空き定員は二百三十一名であり、前年と比べて微減したものの、依然として多くの欠員が生じています。
区では、今年度より、空き定員を活用した未就園児の定期的な預かり事業を実施しており、こうした取組は、在宅子育て家庭への支援とともに、園の経営支援にもつながるものと認識しております。一方で、ゼロ歳児の空き定員は年度前半に多く生じていますが、年度後半には欠員の状況がほとんど解消されていることから、年度途中の入園に応じにくいといった運用面での課題があると認識しております。また、御指摘のように、補助制度を区単独で実施する場合には多額の財政負担も伴うことから、慎重な判断が必要であると考えております。
引き続き国や都へ財政支援を要望するとともに、他区における実施状況等も踏まえながら、安定した園運営に資する支援策等の取組を検討してまいります。
最後に、欠員解消、産休補助体制確立のための保育士の二次募集についてです。
年度当初の四月一日において育児休業者がいる場合は、正規保育士の加配を行っているところです。また、年度途中に欠員が生じた場合は、保育補助として会計年度任用職員の募集を定期的に実施し配置しております。しかしながら、年度の途中から産休を取得する職員は年々増加傾向であり、適切な時期の配置が採用状況によって困難な場合もございます。
区では現在、保育士の負担軽減のための業務改善の取組を進めておりますが、保育士の業務は、子どもの安全を担保しつつ、合間に連絡帳、クラスだより、記録、保育計画等の作成や会議など多岐にわたるため、年度途中に休業者が出ますと負担も多くなります。こうした年度途中の欠員への速やかな対応に向けて、現在、保育士資格を持つ労働者派遣導入の準備を進めているところです。
また、人事所管において育児休業代替任期付職員の採用を予定しており、御提案の保育士の二次募集につきましても、人事所管と連携、調整を図りながら、必要に応じて対応を検討していくなど、職員の確保に一層努めてまいります。
以上です。
私からは、福祉施設の断熱化、省エネ化、再生可能エネルギー導入の誘導策について御答弁申し上げます。
近年の猛暑の影響により、熱中症により健康を損なう方も増加しており、また、地球温暖化、沸騰化にブレーキをかける観点からも、お話しの福祉施設の断熱化や省エネ、再生可能エネルギーの導入の取組を進めることが望ましいと考えております。
お話しのとおり、現在、保育施設をはじめとした福祉施設については、国や都の脱炭素化の補助制度が充実しているにもかかわらず、補助制度の周知が徹底されていないことや、具体的な相談の仕組みがないために十分に活用されていない状況です。
福祉施設の整備や改修に際しては、運営者はまず区の子ども・若者部、高齢福祉部といった担当所管に相談手続に来ることが通例です。この際、例えば、担当所管より環境政策部にも手続の一環として必ず相談に行くように誘導する仕組みをつくりまして、環境政策部で補助金の案内や導入手法の助言を行うことで、抜け漏れなく福祉施設が気候変動対策ができるよう、関係所管と協議調整してまいります。
以上でございます。
私からは、小中学校における断熱化の実証実験と今後の暑熱対策について御答弁を申し上げます。
小中学校の教室の断熱化など暑熱対策については、今年も猛暑が予想されることを踏まえ、早期に実現可能な対策から取り組み、今後、断熱化を含めた暑熱対策の検討を引き続き行ってまいります。
まず、今年度実施する対策として、校舎最上階や体育館には遮熱カーテン、ロールスクリーンを設置、もしくは窓へ遮熱ガラスコーティングを施します。また、体育館の天井には遮熱シート、屋根には散水設備を設置するなど、合計三十七校に実施してまいります。
今後の計画的な暑熱対策のために、暑熱対策の実施前後で測定を行い、効果を検証してまいります。検証結果については、今年度中に策定を予定している標準設計仕様書の見直しの中で整理し、さらに、改築を予定している学校やその他学校に応じた暑熱対策の手法を検討した上で実施してまいります。
夏の猛暑、酷暑から子どもたちを守り、よりよい教育環境を確保するため、新素材の開発状況や先行事例など情報を収集し、手法やコストなどの多角的な視点から暑熱対策方法を選定してまいります。
以上でございます。
子どもの権利条約で、子どもは権利の主体として捉えるという方向になりました。保育についても、親の就業にかかわらず社会的な保育を受ける権利があるというのが世界の流れとなっています。
しかし、政府が進めようとしているこども誰でも通園制度は、子どもの権利のためとうたいながら、スマホアプリで自治体をまたいででも、直前の申込みでも子どもを預けられる、そんなシステムにしようとしていて、これは、新たに保育園に子どもを預けるときに子どもが慣れるまで本当に大変だと、子どもに対する苦労や子どもの命を預かる保育園の仕事をあまりにも無視した、そんな仕組みだというふうに感じています。世田谷区でやっているはじめてのおともだち事業もこうした流れの中にあるというふうに感じています。
区は、子どもの権利を守るために、現場の意見をよく聞いて、国に対してちゃんとした保育をやるように意見を上げていくべきです。細切れの保育ではなくて、子どもが安心できる保育を提供すべきであり、まずは隠れ待機児を含めた待機児解消に全力を挙げることだというふうに思います。見解を伺います。
再質問にお答えいたします。
子どもの権利を守り、子どもの健やかな成長を図っていくためには、現場の声にしっかりと耳を傾け、各施策に反映させていくことが必要です。また、職員が働きやすい環境を整備することは、子どもが安心できる保育につながります。
御指摘のこども誰でも通園制度につきましては、今後、子ども・子育て会議等で議論してまいります。現場における不安の声や課題をしっかりと受け止め、必要な意見を国に伝えてまいります。
待機児童が生じている世田谷区におきましては、まずはその解消に向けた取組を早期に進める必要がございます。引き続き、現場との連携を密にし、子どもを中心とした保育の実現に向けて取組を進めてまいります。
以上です。
終わります。