2024/10/02
それでは、私からは、情報システムの標準化について質問していきたいと思います。
全国千七百自治体の情報システムは、従来は個別に開発、運用されてきました。二〇二一年に国はデジタル関連法を制定して、二〇二六年三月までに地方自治体の情報システムの標準化を行うことを決めました。標準化といえば、私、三十年前、システムエンジニアをしていたんですが、当時はインターネットも一部の研究機関でしか使えなくて、メーカーやOSが違うコンピューター同士で情報をやり取りする、別のメーカーの機器をつなぐというのは本当に大変でした。インターネットやオープンシステムが標準化とともに進んできて、今では随分楽に何でもつながるなと感じています。自治体の情報システムの標準化は、こうした経験からも当然の流れだとは感じています。
自治体情報システムの標準化はどういうものか。二〇二一年の区議会決算特別委員会で、標準化のイメージについて、当時のICT推進課長は「法律上は、ガバメントクラウド上に基幹パッケージベンダーが構築したシステムを構築するものを自治体が利用するという考え方ですので、自治体がガバメントクラウド上にシステムを構築するのではなくて、構築されたものを利用する」と答弁しています。ベンダーという言葉が分かりづらいという御意見もありました。ベンダーというのはコンピューター業界でよく使う言葉で、システムを販売する会社、例えば富士通とか、日立とか、NECとか、こういうことを考えていただければいいと思います。国が標準化の仕様を決めて、それに基づいてベンダーが政府が用意するガバメントクラウド上にシステムを構築、これは新規開発をすると。そして、自治体は、そのシステムを利用するということになります。
自治体が行う作業は、標準システムを利用するために、現在使用しているシステムから新しい標準システムに移し替える移行作業といいます。この新しいシステムと従来のシステムをつなぐシステムも新たに開発しなきゃいけない。国が行う作業は標準仕様を決めること、ベンダーが行うのは標準システムを新たに開発すること、そして、国やベンダー、自治体の仕事が同時並行で進んできたという理解でよろしいでしょうか。現時点で国やベンダー、世田谷区の作業はどこまで進んでいるか、伺います。
自治体情報システムの標準化は、国の定める標準仕様書に基づきシステム事業者が開発し、ガバメントクラウド等に構築する標準準拠システムに各自治体が移行していくもので、法で令和七年度末までの移行が義務づけられています。移行期限に向けて、全国一斉にシステム事業者の開発作業と自治体の移行作業が並行して進められており、区では対象業務を一期、二期に分け、令和六年度につきましては、第一期の住民記録、税、介護、就学の四業務の移行及びデータ連携基盤の構築に向けて現在検証作業などを進めているところです。
区が五月に示したスケジュールでは、現在は第一期、四つの事業の開発・テスト・研修等というフェーズになっています。新しいシステムに区の業務を乗せるという点で、これは新規開発にも匹敵する大変重い仕事だと思います。そもそも今回のシステム移行は国が決めた標準化に合わせるためのものであって、世田谷区の自治体業務の必要性から、この仕事をやっているわけじゃない。区民サービスや役所内の業務との関係では急いで行う必要はないものです。私はこれまでも、システムの移行が現場に過度な負担とならないよう求めてきました。実際現場では今どうなっているでしょうか。
標準システムへの移行作業にとどまらず、定額減税をはじめとする国の制度改正等への対応も重なっており、当初想定していたよりも厳しいスケジュールで移行作業を進めなければならなくなっています。現場の職員の負担も低くはないと認識しています。引き続き職員負担の軽減に配慮しながら進めてまいります。
過度な負担になりますと、通常の業務であったり、区民サービスの低下にもつながると。これはもう当初からリスクとして不安視されているところなので、ここはしっかりと見て、進めていただきたいと思います。
この標準システムは本当に標準化なのかという疑問が今ちょっと湧いてきています。標準化で期待されていることの一つにベンダーロックインの解消というのがあります。ベンダーロックインとは、あるメーカー、あるベンダーでシステムをつくると別のベンダーへの乗換えが極めて困難である状況。標準化によってベンダーの乗換えが簡単になり、特定のベンダーに縛られなくなることが期待をされる。行政情報システムのベンダーロックインといえば、三十年以上前に富士通の一円入札というのが社会問題となりました。当時は、システムを一旦つくってしまえば、後から他社に乗り換えることがもう非常に困難だということで、最初の開発の入札を一円でやったということで大問題になったわけです。今、一円入札は行われなくなりましたが、今でも一旦つくったシステムを他社に切り替えるというのは容易なことではありません。今回の標準化でも、ベンダーロックインの解消が期待をされているところです。
ある自治体DX担当の職員の「紀尾井町と霞が関のシステム標準化事務に従事する中央省庁職員に伝えたい事」と題する記事がネット上で出ていました。私はこれを読んで大変驚いたんですが、標準化に取り組む現場の危機感がここに現れていました。その中で「全国のシステム標準化プロジェクトは今極めて危うい状況です」と言っているんです。今年の六月二十六日にデジタル庁でオンライン会議が行われた。地方公共団体の基幹業務システムの統一・標準化に関する共通機能等課題検討会(第一回)という内容、これが決定的だと。今頃課題検討会の第一回目が行われているということ自体が私も驚きでしたけれども、課題の対応方針ということでデジタル庁が言っているのは「『データ連携に関する課題は事業者間協議にて解決を行う』こととします」と示されているんです。具体的には、最新フラグと履歴番号の扱いというのが議論されています。データベースを構築するときに、最新情報の特定をどのように行うかという問題のようなのです。システム間で情報をやり取りするときに、その方式の違いが問題になると。標準仕様になるのを待ち切れずに、ベンダー各社がいろいろな方法で実装しているようだと、事業者の声が紹介されています。「最新フラグと履歴番号については」「標準仕様書として明確に規定すべきであることは間違いない」「異なるベンダ間でデータ連携を行う際に間違いなくトラブルが発生すると確信している。しかし、これから対応方針の再検討や方針転換を行うことについては」「プロジェクトとしてかなり致命的な状態であると言わざるをえない」ということです。履歴番号はマスターキーなので、今さら変えられないという声もたくさん出ていて、もうつくってしまったから後戻りできないという話なんです。このまま突き進めばトラブル必至。だが、開発は進んでおり、もう後戻りできないので、現場の責任で何とかしてくれ。政府はこう言っているというふうに多くの関係者は受け取ったようです。
ベンダーの「間違いなくトラブルが発生」という言葉も出ているような状況です。このまま突き進めば、トラブルが多発し、安定したシステムの運用ができないのではないか、どういうところがここで問題になってくるのか、世田谷のシステムでは影響はないのか、どう考えているか、伺います。
標準システム間の連携につきましては、データ要件・連携要件標準仕様書に基づいて行われることになりますが、委員御指摘のとおり、国の検討会において、細かい技術的な話ですが、最新フラグや履歴管理など標準仕様書に記載されていない事項につきましては、地方公共団体と事業者間で調整することという方針が示されております。システム事業者によって標準仕様書に記載されていない事項に対する考え方や管理方法には差異がありますから、異なる事業者での標準システム間の連携が発生する、世田谷でいいますと第二期、移行二期分の稼働に向けて、統一したルールを設けることが必要となります。これは各自治体共通の課題でもございますので、引き続き国や他自治体の動向を踏まえつつ、課題に対応してまいります。
世田谷区でも影響を受ける可能性があるし、どうなるか、分からないというところで、やはり非常に不安な要素だと思うんです。世田谷区の場合、最終的に十四もの標準業務システムを使うことが予定されています。一つのベンダーで全部やるというわけではない、第二期で二つのベンダーになるということですが、結局は自治体ごとにベンダーの組合せはいろいろだ、システム間連携はそれぞれの自治体ごとにつくり込む必要がある、結局自治体ごとにシステムをつくり込んでいくという話になっちゃうんじゃないか、ベンダーがつくった標準システムを利用するだけではなくて、自治体ごとにつくり込まれたシステムを使うという標準化ではないような話になっちゃうんじゃないのか、結局ベンダーロックインは解消されないことになるんじゃないかと。これを区はどう見るでしょうか。
標準システム間の連携においては、基本的に統一された標準仕様での連携となります。したがって、システム事業者の切替えに当たっても、統一されたデータでの移行が可能になります。標準仕様に定められていない事項をどう扱うか、また、事業者の切替えに伴う移行経費の扱いなど課題はあります。しかしながら、他事業者の参入障壁は従来よりも低くなり、中長期的にはベンダーロックインの解消につながり、事業者間の競争による費用低減も期待できるものと考えています。
期待できるということですけれども、そのための標準化を国を挙げてやっているわけですから。だけれども、本当にそこがうまくいくのかというのが大変不安な状態にあるというのを私は感じています。
それからもう一つ、次の問題ですけれども、国が定めた期限は無謀なものだ、目に余る弊害があると私は思います。世田谷区が利用を予定している標準準拠システムは十四業務ある、国が定めた期限は再来年、二〇二六年の三月だ、世田谷区の第一期、四システムは来年、二〇二五年の一月に運用をスタートする。そして、第二期、残りの十システムを再来年、二〇二六年の一月に運用を開始するという計画で進めていたところが、第二期のうち半分の五つのシステムは移行困難システムとして、法律が定める再来年三月までの移行は困難だということで国に報告した、移行困難の理由は、いずれも期限までにシステム移行に対応する事業者が見つけられなかったということです。当初から「全国の自治体が同時に移行を進めることによる事業者及び自治体の人材確保や費用増加にかかるリスク」がある。これは指定都市市長会が二〇〇一年に提言で述べていることで、指摘されてきました。データ連携の詳細の仕様決め、ベンダー側の十分なテストなど安定したシステムとするためには、二〇二五年の期限が障害になっていると私は思います。先ほどの話も、もうつくり込んでいる、後戻りできないと言って、仕様として決めなきゃいけないことを現場任せにするみたいな話になっているわけです。信頼の置けるシステムになるのか、大変不安です。運用が始まってから障害が全国で次々起こるようなことになれば、自治体もそれに振り回されることになります。二〇二五年までと決めた期限の撤回など、国に求めるべきではないでしょうか。現在の国の態度、それから区の考えについて伺います。
令和七年度末までの標準化移行期限に向けて全国一斉に、かつ集中的にシステム構築と移行作業が進められているため、対応可能なシステム事業者が限られることや事業者側の人材不足の影響により、国が定めた期限までに移行できない移行困難システムが全国的に生じてきており、区におきましても児童手当や国民健康保険などの一部の業務を移行困難システムとして国へ報告しているところです。都内においても、多くの自治体が移行困難システムに該当することが見込まれており、こうした状況を踏まえて、都において実態把握や意見交換を継続的に実施しています。今後も東京都を通じて国への申入れを強く行ってまいります。
一方、現行システムを使い続けることでシステムリプレースの期限が来てしまったり、新たな法改正等に伴うシステム改修作業等が継続して発生するなど、標準化移行すれば不要となる経費増も想定されます。区民サービスに影響を出さないことを前提に、職員の負担にも配慮して、安全で安定した標準化システムへの移行に取り組んでまいります。
非常に無理な期限を切っていることで、本当にあちこちに無理が出ていると思うんですね。こういうことに対してしっかりと国に対して是正するべきだと。もう間に合わないというところが全国で多発しているわけですから、ここはしっかりと見直しを求めていくべきだと思います。
次に、財源について、システム標準化はそもそも世田谷区が必要で始めるんじゃなくて、法律で国がやれと言ってきた話、費用は全て国が持つべき性格のものです。全国市長会なども国に財政負担を求めています。三月の予算特別委員会でシステム標準化について取り上げたときに、費用は、令和七年度までの初期費用、運用費用を含め六十億円を超える見込みだ、そのうち国からの財源は自治体から要望も出して、当初の話よりは上がったけれども、結局三割程度、七割は区の持ち出しという話でありました。引き続き国に要望するということでしたが、現状での費用の見込み、そして国からの補助はどうなっているか、お答えください。
委員からのお話にありましたが、標準化に伴う費用負担につきましては、国のデジタル基盤改革支援補助金の対象になっており、当初区に示された補助上限額は約七・五億円と不十分でありました。これまで特別区長会を通じての要望書提出など、国への働き方かけを行ってまいりました。その後、令和六年三月に補助基準額の上限額等の算定方法が変更になり、当初の約三・四四倍、約二十五億八千万円が上限額として国から示されました。
一方、本補助金は、アプリケーションの導入費など一部経費が対象外となっているとともに、令和七年度末の移行期限までの経費のみが対象となっており、移行困難システムとなった業務についての補助金の扱いについては、いまだ国から示されておりません。
区といたしましても、標準化に係る経費は国で負担するよう、引き続き機会を捉えて東京都等とも連携しながら、強く意見を上げてまいりたいと考えております。
期限を超えた分については、お金が出るかどうかも全く分からないというような話で、これは本当にひどい話だと思うんです。移行困難なんだということで、もう移行すること自体、やめると宣言してもいいような話なのではないかと思います。国にしっかりとお金を出すよう強く求めていただきたいと思います。
そもそも政府のDX推進は非常に動機が不純だと私は思います。自治体が持つ個人情報を利活用する、そして、企業の新たなもうけの種にしようというのが大本の考えにある。それから、マイナンバーカードで国民総背番号制であるとか、税や所得の把握など国民管理、こういう方向を推し進めようとしている。さらに、今、自民党の裏金が問題となっていますが、ICTの公共調達を増やすことで、新たな公共事業として財界に利益をもたらすような、まさに土建国家と言われていたような体質が今も続いている、利権政治の臭いがする。国民の権利やプライバシーを守って、効率的で便利な国民のための仕組みを本気でつくろうと国は考えているのかというふうに、私、疑問に思います。本気で進めようとしている現場の担当者、そしてベンダーの労働者、この矛盾から来るトラブルへの対応で本当に疲弊し切っていると思います。そして、こんなやり方ではよいシステムもできないと思いますし、世界からはますます遅れていくと思います。このような状態を終わらせるために、現場からしっかりと声を上げていく必要があると思いますが、私、このきっかけになった記事も松村副区長のツイッターで知りまして、それを読んでびっくりして、この質問になったんですが、副区長、どのように考えているでしょうか。
御質問ありがとうございます。標準化は本当に日本全体の問題で、少子高齢化社会を迎える中で、先ほど土建国家みたいなお話がありましたけれども、人が少ない中でどうやって社会システムをつくっていくかというのは、この立場になってさらに強く考えているところです。方向性としては、間違っていないかなとは思っておりますというのが私の感想でございます。
私も標準化をするということ自体は、システムの流れであったり、先ほどインターネット前の話をしましたけれども、技術の進歩としては当然の方向だとは思うんですが、だったら、それをやるならば、本当に国民のため便利なものというふうに進めるべきであるし、現場の都合や現場の声を聞いて進めるべきだと思うんです。一遍に全部やって、人が足りないなんていう状況をつくること自体、もう本当におかしいと思うんですが、そういうところについてはいかがですか。
やり方についてはいろんな問題が今、足元で起きていて、私の立場としては、区民の皆様に絶対御迷惑をおかけできないという決意で向かっております。