2024/09/19
まず、東京二〇二五デフリンピックについて伺います。
四年ごとに開催される耳の聞こえないデフアスリートを対象とした国際総合スポーツ競技大会が二〇二五年十一月に東京で行われます。デフとは、英語で、耳が聞こえないという意味です。デフリンピックは、国際的な聾者のためのオリンピックです。日本で初めての開催であるとともに、一九二四年にパリで第一回デフリンピックが開催されてから百年を超える歴史ある大会であり、一九六〇年に始まったパラリンピックよりはるかに長い歴史を持っています。世田谷区内では、駒沢オリンピック公園総合運動場で、陸上、ハンドボール、バレーボールの三競技が行われます。
先日、世田谷区聴覚障害者協会の方と東急電鉄に申入れに行ってきました。デフリンピックの開催中、世界各国七十から八十の国、地域から選手約三千人、その他スタッフ約三千人、観客の方も含め多くの耳の不自由な人が駒沢大学駅などを利用することが見込まれます。当事者の方からは、電車の遅れ、事故などの情報が車内アナウンスだけでは分からない。駅員のいない改札口にはインターホンがあるが、耳の聞こえない人には使えない。筆談機能やカメラつきの多機能なものにしてほしい。よくある質問に答えられる、イラストなどで指差し確認できるようなものがあればいいなどの聞こえない方へのインフォメーションや対応などを求めました。当事者の方のお話を伺うことで、初めて何にお困りなのか分かることもあり、適切な対応を取ることができるようになります。
そこで伺います。東京二〇二五デフリンピック応援隊として、大会広報や機運醸成に協力し、デフアスリートなどを応援するキャラクターにも世田谷区として登録するなど、デフリンピックを大いに盛り上げるとともに、国内外から観客を含め、耳の不自由な方が来られることに配慮した対策が必要ではないでしょうか。検討状況をお聞きします。
また、二〇二四年四月から手話言語条例が施行されました。この機に、聾者の文化への理解促進や、デフスポーツの魅力を感じてもらうためにも小中学生の観戦機会を設けたり、子どもたちにも手話に親しんでもらうなど検討していただきたい。見解を伺います。
次に、旧林愛作邸の保存について伺います。
駒沢一丁目に、近代建築の三大巨匠の一人と言われるフランク・ロイド・ライトの手がけた旧林愛作邸が現存しています。駒沢公園に隣接し、周辺は閑静な住宅街です。日本にあるフランク・ロイド・ライトの四つの作品のうち、彼が日本滞在中に完成したのは、この旧林愛作邸だけです。ほかの三つの建築物のうち、二棟は重要文化財、一棟は登録有形文化財ですが、フランク・ロイド・ライトが帰国後、弟子が仕上げたとされています。このことからも、旧林愛作邸の保存はより重要です。
世田谷区として、旧林愛作邸の文化財としての価値をどのように考えているのか、見解を伺います。
電通の厚生施設として長く使用されてきたことにより、改築された部分があったり、築百年を超え、かなり劣化が進み、移設せずにこの地で修復、保存するには相当の費用がかかるでしょう。現在の所有者である住友不動産は、保存するためには土地の有効活用が必要と、高さ制限や用途地域の変更を求めています。世田谷区は、当該地において大規模な土地利用転換が想定されることから、旧林愛作邸の現位置での保全や周辺環境に配慮した建築計画を誘導するため、平成二十七年に街づくり誘導指針を策定、その後、住友不動産が令和三年にこの土地を取得しています。
先日行われた近隣住民への説明会や見学会では、保存と引き換えに、もともとは庭や農地として使用していた土地部分にタワーマンションを建設するなど、住環境が破壊されるのではないかと、住民から強く危惧する声が聞かれました。周辺環境に配慮する土地利用の基本的な考え方は、一、緑豊かで住みやすい町、二、誰もが快適に移動できる町、三、安全で災害に強い町です。
文化財の保存と住環境を守ることが両立できる住民の納得できる解決を求めます。保存の在り方の検討内容についても丁寧に、広く住民に明らかにしていくべきです。見解を伺います。
フランク・ロイド・ライトの建築は、自然と建築の共存、敷地に対する建物配置が絶妙、周りの環境と違和感なく調和しているなどと評価されています。この土地全体が当時の東京郊外の風景とともにあり、建築物だけでなく広い庭部分含め設計されており、価値があるものです。建物の居間から見える景色に高層マンションが見えたのでは興ざめです。世田谷区が買い取って適切に保存、活用することが望ましいと考えます。検討していただくことを求めます。
次に、認可外保育施設についてです。
区内のベビーホテルでの乳児の死亡事故を受けて、世田谷区内認可外保育施設における重大事故検証報告書が出されました。事実関係を把握し、二度とこのような事故を起こさぬよう再発防止策を講じなければなりません。
明らかになった問題点の一つは、保育状況と職員体制です。事故発生時、ゼロ歳児五名、一歳児三名、二歳児一名で、保育の体制は、保育士資格のある施設長は事故当時外出しており、保育士資格のない勤務歴一年四か月と、勤務歴六か月のいずれもほかの保育施設での勤務経験のない職員の二人でした。そのうち勤務歴一年四か月の職員はコミュニケーションに難があり、職員同士の連携が十分にできない、単独での保育が難しく一人で保育を行う時間があると危険があったと指摘されています。しかし、保育従事者数は二名いれば足りるというのが基準となっています。保育従事者の適格性含め、この基準で十分とは言えないのではないでしょうか。
この施設のようなベビーホテルは一時預かりのお子さんも多く、毎日違うお子さんを預からなければならない。登園時間もばらつきがあり、当然、お昼寝の時間も一律に寝てくれるわけではありません。とりわけ年度後半には、亡くなったお子さんのように認可保育園に入れなかったお子さんが増加し、職員の負担は並大抵ではないと思います。
ゼロ歳児保育を行う区立保育園の保育士さんにお話を伺いましたが、お昼寝のときのチェックは五分置き、二人体制で、そのうち一人は正規職員が順番にやっていると伺いました。保育士さんは子どものお昼寝の時間に昼休憩を取ることになっていますが、会計年度任用職員に優先的に休憩を取ってもらっており、今の体制では休憩が取りにくい、保育士を増やしてほしいというのが現場の声でした。区立認可保育園ですらこの状況です。命守る基準考えるべきときではないでしょうか。
検証では、区の認可保育施設の指導監督基準について、児童の安全確保に関する事項を中心に、国が定める基準にとどまらず、より踏み込んだ内容にすることや、保育従事者の適格性を確保することも報告に盛り込まれています。
認可外保育施設の職員体制を見直すべきだと思います。認可外保育施設といっても、ベビーホテル、事業所内保育、院内保育、その他と、その保育内容は多岐にわたっています。その全てにわたって、例えばゼロ歳の乳児も利用するベビーホテルと、英語や音楽に特化したような保育施設では、保育状況や職員体制を一律に判断するのは無理がありますが、大変ですが、丁寧な対応を求めます。
そもそも認可、認可外問わず人員不足の解消が事故を起こさないための必須条件ではないでしょうか。保育の質を守るため、この検証を受けてどうするのか。国や東京都への改善を求めることはもちろん、区独自での人員基準の引上げを求めます。見解を伺います。
以上で壇上からの質問を終わります。
私からは、デフリンピックについて、聴覚障害のある観客への配慮について御答弁いたします。
来年十一月に東京都で開催される聴覚障害者の国際スポーツ大会、デフリンピックでは、駒沢オリンピック公園総合運動場が陸上競技、ハンドボール、バレーボールの会場となります。この大会に向け、区は、区民の関心を高め、開催の機運を盛り上げるため、スポーツ事業での大会ピンバッジの配布や、手話ダンス体験、選手との交流などを実施してまいりました。引き続き、大会の気運醸成活動や大会PRに努めるとともに、さらにはデフリンピックを通じた共生社会の推進の取組といたしまして、大会ボランティアの募集の周知や、会場を訪れる聴覚障害の当事者の視点に立った配慮などについて、主催者である東京都スポーツ文化事業団と連携、協力して取り組んでいきたいと考えており、庁内の関係所管とともにこれらについての検討や、主催者との協議を進めてまいります。
以上です。
私からは、東京二〇二五デフリンピックの小中学生の観戦機会について御答弁いたします。
東京二〇二五デフリンピックの開催は世田谷区内を会場として三つの競技が行われるなど、聾者の文化の理解促進等を児童生徒へ図る契機になるものと考えております。大会の開催に向けて、令和六年七月には東京都教育委員会から学習パンフレット、学ぼう!デフリンピックが小学校四年生から六年生の児童に提供されており、各学校において聾者の文化の理解促進や、デフスポーツの魅力の啓発に活用しております。また、競技観戦につきましても、現在、東京都において希望する学校を対象とした体験活動事業を検討していると聞いております。
区といたしましても、子どもたちにとってスポーツのすばらしさや、障害のあるなしなどにかかわらず互いを尊重し合うことの大切さ、多様性を学ぶよい機会であるとの認識の下、積極的な活用を学校に働きかけてまいります。
以上でございます。
私からは、旧林愛作邸の保存について、三点御答弁をいたします。
まず、文化財としての価値をどのように考えているのかについてです。
旧林愛作邸は、帝国ホテルの支配人であった林の自邸として、大正六年にフランク・ロイド・ライトが設計し、現在の駒沢一丁目に建築された歴史的建造物です。ライトの建築作品は、アメリカ合衆国にある八件が世界遺産に登録されております。また、日本には旧林愛作邸を含め四棟が現存しており、自由学園明日館と山村家住宅が国の重要文化財に指定され、玄関部分のみが移築された帝国ホテル旧本館は国の登録有形文化財に登録されてございます。
旧林愛作邸は当時のライト建築の特徴をよく残していることから、世界的な建築遺産であるとともに、世田谷の近代化の過程を物語る区にとっても貴重な文化財と言えます。このようなことから、旧林愛作邸は現位置において、周辺の池等の庭園を含めて保存活用され、将来にわたり国民共有の財産として保護の下に置かれるべき文化財であると認識しております。
次に、保存の在り方の検討内容についても丁寧に住民に広く明らかにすべきについてです。
旧林愛作邸の現位置での保存について、所有者は社会的価値の高い取組と位置づけ、建築計画との両立を検討しております。一方で、実現のためには都市計画諸制度等の活用が必要である旨の要望を受けております。区では、現位置での保存のためには所有者の理解と協力が不可欠であることから都市計画諸制度等の活用が必要であると考え、本年八月に旧林愛作邸を含めた駒沢一丁目一番地区における土地利用の基本的な考え方を取りまとめ、文教及び都市整備常任委員会において御報告したところでございます。
また、周辺にお住まいの方々に向けては、七月に旧林愛作邸の現位置での保存における区の取組についての説明会を実施し、今後の進め方などに関して様々な御意見をいただいてございます。都市計画諸制度等の活用に当たっては、土地の高度利用と本地区周辺への影響を考慮した建築計画を誘導する必要があることから、世田谷総合支所と連携して十月にも土地利用の基本的な考え方について説明会を実施するなど、今後も継続して周辺の皆様への情報提供に努めるとともに、区民の皆様の御意見を伺いながら進めてまいります。
最後に、世田谷区が買い取り、適切に保存活用することが望ましいのではないかについてです。
全国には、公的所有だけではなく民間事業者や財団法人が所有し、文化財指定を受けて保存活用されている文化財も数多く存在いたします。旧林愛作邸につきましても、所有者は取得の時点から現位置での保存を社会的価値の高い取組であると認識されており、今後、保存活用の計画等に関して、所有者の意向を踏まえて協議をしてまいります。
また、教育委員会では所有者に対し、文化財保護制度の下で保存活用されることを要望しており、文化財指定を受けることで、修理に当たって経済的、技術的な支援を受けることができ、将来にわたる保存が担保されます。あわせて、区民が文化財の価値を共有できる機会が得られるよう、保存活用に関する計画策定等に当たり、鋭意必要な協力支援に努めてまいります。
以上です。
私からは、認可外保育施設に対する区独自での人員基準の引上げについて御答弁いたします。
このたびの認可外保育施設での重大事故と検証委員会の検証、提言を受け、職員の体制や保育の知識、専門性の向上、安全な保育に対する区の指導監督、サポートの一層の強化が事故再発防止に不可欠なものと改めて痛感しているところでございます。
お話しの職員の人員基準は国によって定められているところでございますが、一時預かりやゼロ歳児が多い施設では、特に保育士資格のない職員への負荷が大きいものであると検証委員会でも御指摘をいただいております。
一方、認可外保育施設は英語教育に力を入れている施設やスポーツ指導を中心とする施設など、施設種別や特徴などが多様化しており、区が独自に一律の指導監督基準や支援方法を定めるには課題があるものと考えております。
区といたしましては、このたびの提言を踏まえ、児童の安全確保を第一とした認可外保育施設の指導監督基準や認可外保育事業の保育施策上の位置づけの見直しについて国に要望してまいります。同時に、一時預かりやゼロ歳児が多い施設、職員の離退職が多い施設など、そういった施設については施設の人員体制等に特に注意しながら、より踏み込んだ指導、支援を実施してまいります。
以上です。
再質問します。
旧林愛作邸については、重要文化財、あるいは世界遺産級との評価がされてもおかしくない文化財を、建物と池部分だけを切り離して残りの土地を有効活用するというのでは、文化財としての価値が大きく損なわれるのではないでしょうか。文化財保存のため、専門家交え多面的に検討することが必要だと思います。区長の見解を伺います。
保坂 区長 坂本議員の再質問にお答えをいたします。
林愛作邸の保存の在り方について再質問ということでございます。私自身、この長い間、電通が福利厚生のために持っていたグラウンド、こちらのほうを売却されるという話を届けによって知りまして、ここに林愛作邸が存在しているということを大変大きな存在だと認識していましたので、売却前に電通の社長に対して相談をさせていただいて、この林愛作邸自体の、いわば図面だとか現況が分かるものはないかというのを探してもらいました。
実は、それはなかったんですが、区の文化財のほうで調査をさせてもらうということと、もう一つ、やはりこの林愛作邸を保存していいただくということを売却時の前提条件にしていただきたいという要請をいたしました。これは、そのとおりにされたというふうに伺っております。
令和四年度に、現在の所有者、そして、副区長、教育長とともに現地も確認をして、林愛作邸のフランク・ロイド・ライトの設計思想、今、議員に御紹介いただきましたけれども、区の歴史を物語るというよりは、世界的に大変価値のある遺産と。しかしながら、かなり老朽化というか、長いこと閉鎖されていたということもありまして、相当程度手を入れて、再生をするための、ある種の手入れということは必要だというふうに思いました。
また、おっしゃるところの広い庭園、池も含めて、池には、現在水は入っていないんですけれども、その池も含めた庭園がありまして、これ全体がセットとして林愛作邸の存在を支えているものであると認識しております。
そうした認識の下で、地域資源の魅力を高める取組や、都市計画諸制度の活用による歴史的建造物の保存などを重要な柱としたこの場の土地利用の基本的な考え方を定めて、この考え方に基づいて、保存する範囲について所有者との間の協議を進めているところであります。
今後の協議に関しましては、文化財保護審査会委員や学識経験者、専門家らの意見に加え、当然、国や都の意見も聞きながら、旧林愛作邸の適切な保存、そして、保存するだけではなくて活用ということに向けてしっかりと役割を果たすよう、区としても取り組んでいきたいと思います。
以上です。
適切な保存ということで、ぜひきちんと協議していただきたいと思います。